天下分け目の対中テクノロジー戦争、バイデンは技術的優位を死守せよ
FIGHT ON TECH, NOT TRADE!
中国の通信・半導体産業を追い詰める対中テクノロジー戦争の行方は DADO RUVIC-REUTERS
<今や米中の主戦場はテクノロジー、貿易や製造業の国内回帰に固執するといった時代遅れの考えは捨てよ>
(本誌「バイデンvs中国」特集より)
政権が新しくなっても、貿易政策は古いままか──。
1月20日に任期が切れるドナルド・トランプ米大統領と、ジョー・バイデン新大統領には無数の違いがある。だが貿易分野、特に対中貿易に関しては、バイデンはトランプさえも上回る保護主義者だ。
バイデンは、中国に対してさらに「積極的な貿易上の措置」を取ると公約しただけではない。連邦政府が米製品購入に4000億ドルを投じる「バイ・アメリカン」計画を実現するため、政府調達に関するルールの変更も提案した。これは日本やEUが異議を唱えそうな政策だ。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、国家間でマスクや人工呼吸器の争奪戦が始まる前から、2020年は「脱グローバル化」の年だった。アメリカでは昨年、輸出入額が共に前年比で低下。それまでの約10年間、横ばい状態を続けた後の出来事だ。
とはいえ「グローバル化=貿易」といまだに考えているなら、その見方はあまりに古い。今や世界を結ぶのはコンテナ船ではなくテクノロジー。成功のカギは技術ネットワークでの優位にあることを、バイデンは学ぶべきだ。
一部製造業のリショアリング(国内回帰)を目指すのは悪い考えではないが、それではインド太平洋地域の地経学的パワーバランスの転換は実現しない。対中テクノロジー戦争は通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)に打撃を与え、中国の半導体工場を厳しい圧力にさらし、TikTok(ティックトック)を米事業売却の瀬戸際に追い詰めている。中国に対して本気で強硬姿勢で臨むつもりなら、バイデンはこの戦いを強化すべきだ。
トランプの貿易戦争は実際のところ、中国からの輸入の減少に成功。増大が不可避とみられた対中依存は、逆の傾向を示している。
ただし、アメリカの貿易赤字全般に本質的な影響は見られない。サプライチェーンが中国からほかの東アジア諸国に移ったにすぎないからだ。
自給自足経済の薄い実現性
これは中国にとって悪い知らせだ。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は資材の国内調達強化などを促す「双循環(2つの循環)」戦略を掲げるが、これは環太平洋地域の供給体制に起きた大転換の結果である可能性が高い。
バイデンのバイ・アメリカンと習の双循環は共に、自給自足経済へのシフトを告げている。そして、どちらも成功の見込みは薄い。