最新記事

中東

バイデン政権の核合意復帰をめぐり一触即発のイランとイスラエル

Iran Threatens to Take Out Tel Aviv if Israel Follows Through With New Military Plans.

2021年1月28日(木)16時16分
トム・オコナー

バエジはまた、ドナルド・トランプ前米大統領がイスラエルにすり寄り、2018年に核合意から離脱したことを非難。トランプの娘婿で上級顧問を務めたジャレッド・クシュナーをイスラエルの「手先」と呼ぶ一方、バイデン新政権には一定の期待を示した。

バエジはバイデンに早急に核合意に復帰し、トランプ時代にイランに課した過酷な経済制裁を解除するよう呼びかけた。トランプの「最大限の圧力」政策はイランと敵対するイスラエルやサウジアラビアには歓迎されたが、地域の緊張を極度に高める結果となった。

しかも米軍は昨年、イラン革命防衛隊の精鋭部隊クッズ部隊の司令官ガセム・ソレイマニをイラクで殺害。イランは報復としてイラクの駐留米軍基地をミサイル攻撃し、さらなる復讐を誓った。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は1月27日、新型コロナウイルスのワクチン接種イベントで、イランの核武装を何としても阻止する考えを改めて強調した。

「私が推進している政策は明白だ。イランの核兵器保有は断じて許さない。敵味方を問わず、私はそう宣言している。わが国の命脈を守ることは、われわれの最も重要なミッションだ」

バイデンも新政権の高官も、トランプの中東政策を批判しているが、早急に核合意に復帰する考えは示していない。バイデンが国務長官に指名したアントニー・ブリンケンは、1月19日に上院で行われた指名承認のための公聴会で、復帰までには「長い道のり」があると語った。

どちらが先に折れるか

上院の指名承認の翌日、1月27日に開いた就任後初の記者会見で、ブリンケンはその理由を次のように述べた。

「イランは複数の分野で合意を逸脱している。合意順守を決定しても、順守している状態に戻るにはある程度時間がかかるだろう。イランが義務を履行しているかどうかわれわれが査定するにも時間がかかる。われわれはまだそこに至っていない」

こうした発言はイラン当局を苛立たせる。イランは今年に入り、核合意で定められた上限を大幅に上回り、核兵器級に近い濃縮度20%のウラン製造に踏み切った。だがそれも、核合意の条件だった制裁解除がトランプの離脱で履行されなかったために、「一時的にウラン濃縮度の上限を超えた」のでだ。

まずはアメリカが合意に復帰すべきで、そうすれば自分たちも約束を守る、というわけだ。「いったいなぜ、核合意と国連安全保障理事会の決議に違反する(アメリカの)残酷な経済テロに4年間も毅然として耐えてきたわれわれが、先に友好的なゼスチャーを示さなければならいのだ」と、イランのジャバド・ザリフ外相は1月26日に怒りのツイートをした。

「理由もなく合意を踏みにじったのはアメリカだ。まずアメリカが過ちを正すべきだ。そうすればイランもそれに応える」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中