最新記事

ロシア

ナワリヌイ釈放要求デモはロシアをどう変えたか

Alexei Navalny Inspires Big Anti-Putin Protests, but No Russian Spring—Yet

2021年1月26日(火)18時23分
デービッド・ブレナン

ナワリヌイの今後の課題は、より保守的な強い地方での支持を獲得することだ。彼とその支持者たちはこれまでも、地方への働きかけを行ってきており、実際ナワリヌイは毒を盛られる直前にも、シベリアで市議選の候補者の応援をしていた。今後もそうした活動を続けていく必要がある。

多くの有識者は、ナワリヌイの暗殺未遂と帰国後の身柄拘束は、プーチンがナワリヌイをどれだけ恐れているかを物語っていると指摘する。ナワリヌイの陣営は彼が拘束された後も、黒海沿岸にプーチンが所有する、資産価値13億ドル相当の豪邸の暴露動画を投稿した。この動画はこれまでに8600万回以上、視聴されている。

ガレオッティは、プーチンが過去にナワリヌイをヴォルデモート(名前を口にするのも恐ろしい存在)扱いしたことについて、「反体制派の指導者がプーチンの中で『名前を言うのも恐ろしい存在』になってしまったことには大きな意味がある」と指摘した上で、「それでも、もっと重要なのは、ナワリヌイが象徴しているものだ」

旧世代と新世代の対決

観測筋は長年「プーチン後」について議論してきた。現在68歳のプーチンは、後進に道を譲るための枠組みづくりをしていく意向を公言してきた。しかし彼が、長く維持してきた権力を手放すと本気で考える者はほとんどいない。

2024年に大統領の任期を終えた後、プーチンが別の役職に就いて大統領の座を後継者に譲る可能性はある。あるいは巧みに画策し、大統領としてではなくても別の立場から、ロシアの統治を続ける可能性もある。

どちらにせよ、ロシア国内でナワリヌイの運動に対する支持が高まっている事実は、ロシアに「それとは別の未来」の選択肢を提示するものだ。ナワリヌイは、過去の一部の発言から外国人嫌い(あるいは人種差別主義者)と見なされてはいるものの、今よりリベラルで民主的で、より近代的なロシアを象徴している。

「これは44歳と68歳の対決だ」とガレオッティは言う。「別の言い方をすれば、ポスト・ソビエト世代の政治家が初めて、ソビエト時代を象徴する最後の世代に勝負を挑んでいるのだ」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メタ、反トラスト法訴訟の和解持ち込みへトランプ氏に

ビジネス

カナダ首相、米関税に対抗措置講じると表明 3日にも

ビジネス

米、中国からの小包関税免除廃止 トランプ氏が大統領

ワールド

トランプ氏支持率2期目で最低の43%、関税や情報管
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中