ナワリヌイ釈放要求デモはロシアをどう変えたか
Alexei Navalny Inspires Big Anti-Putin Protests, but No Russian Spring—Yet
過去1年間はプーチンにとって、パンデミック発生当初の「不在」を批判されるなど困難な年だった。プーチンは、接触した医師が新型コロナウイルスに感染したことから、4月初頭に自主隔離を発表。権限や責務の多くを、政府の下部組織や地方自治体の指導者に委譲せざるを得なくなった。
パンデミックの影響で、プーチンの任期延長を可能にする憲法改正案をめぐる国民投票は4月から6月に延期になった(投票の結果、78%の賛成で2036年まで続投可能に)。国家目標に掲げていた、国民の生活水準の向上を図るための数々のプロジェクトも先延ばしとなった。
パンデミックを受けてロシアは全土でロックダウンの導入を余儀なくされ、国民の生活水準は向上するどころか、大幅に低下した。プーチンにとってレガシーを築く重要な年になるはずだった2020年は、新型コロナウイルスに振り回される1年となった。
プーチンと与党・統一ロシアが次に狙っているのは、9月に実施される連邦下院選挙で圧勝することだ。しかしパンデミックやナワリヌイの問題、国民の間にくすぶる不満が影を落としている。
選挙であからさまな不正操作が行われれば、さらなる騒乱や暴動が起こる可能性がある。「政府が現状を軽視していると国民が感じた時に、どのようなことが起こるのか。私たちはベラルーシ(の大規模な反政府デモ)でそれを目の当たりにした」とガレオッティは指摘する。
国内での支持獲得に足掛かり
23日の抗議デモで注目すべきは、多様な人々が参加していたことだ。これまで抗議デモを主導してきた若いリベラル派の活動家が参加者の大半を占めていたのは相変わらずだが、彼らが訴えた腐敗や縁故主義、説明責任の欠如への不満は、あらゆる層の国民の共感を呼ぶものだ。
ナワリヌイはこれまで、西側諸国では注目されてきたものの、ロシア国内で支持基盤を築き、活動の機運をつかむのには苦慮してきた。国営メディアからは要注意人物と見なされ、プーチンは公の場でナワリヌイの名前さえ口にしなかった。2020年の暗殺未遂を経て1月にロシアに帰国した後も、それは変わっていない。
彼がロシア国民の間でどれだけの支持を得ているのかは不明だが、少なくともナワリヌイが誰であるかは、徐々に知られ始めている。
「実は国民の過半数は、ロシア政府がナワリヌイに毒を盛ったとは信じていない。自作自演か、あるいは何かの間違いだったと思っているのだ」とガレオッティは言う。「だがある意味、それはさほど重要な問題ではない。重要なのは、この一件でナワリヌイがその存在を知られる人物になったことだ。彼が最も苦労してきたのが、そこなのだ」