最新記事

アメリカ政治

議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕

The Roots of the Capitol Riot

2021年1月18日(月)16時20分
ビル・パウエル(本誌記者)

1月4日、ジョージア州の上院選決選投票の応援演説で、トランプはペンスが行動しないなら「彼をよく思わなくなるだろう」と暗に圧力をかけた。トランプは自分が「強い立場」のつもりでこんな発言をしたと、側近らはみている。2024年の大統領選で最有力候補になる、たとえ出馬しなくても共和党の最有力者として後継者を決められる。結局、自分ほど大衆を引き付けられる人間はいない、と。

「最後まで戦う」はずが

1月6日朝、それは一目瞭然だった。ワシントンに「盗みをやめろ」と訴える数万人が集結。トランプは彼らに「平和的かつ愛国的に」議事堂に向かって行進するよう呼び掛けた。バイデンの勝利認定を阻止したいとの思惑からだ。だがわずか数時間後、彼はホワイトハウスでデモ隊が議事堂に突入する映像を目にし、ペンスは議事堂から急いで避難する羽目になった。

トランプと彼の家族や忠実な側近にとっては最悪の出来事だった。集会はトランプの政治的将来のため──最後まで戦う姿勢を示すためだった。だが1日が終わる頃には、それはもはや不可能になっていた。家族ぐるみの友人の中でも「これが大惨事だったと考えていないのは取り巻き中の取り巻きだけ」だと、友人の1人は語っている。

トランプ一族も個人的代償を払った。クシュナーの義妹でモデルのカーリー・クロスは、「民主的に行われた選挙の結果を受け入れるのは愛国的、受け入れずに暴力を引き起こすのは反米的」だとツイート。義兄夫婦にそう伝えたらとフォロワーに聞かれると「もうやってみた」と答えた。クシュナーとイバンカはこの公開の場でのやりとりに激怒したという。トランプワールドでは忠誠が第一なのだ。

だがイバンカ夫妻も、友人や知人の多くがクロスと同じ気持ちだと気付いている。「彼らは関係修復に取り組むべきだと分かっている」と夫妻のニューヨーク在住の友人は言う。「2人ともばかじゃない」

議事堂突入の1週間後、上院でのトランプの2度目の弾劾裁判が決定。4年間トランプと密接に連携してきたミッチ・マコネル共和党上院院内総務もトランプは弾劾に値する罪を犯したと周囲に語った。大統領就任当初からの側近の1人は落胆を隠さない。「一時は、選挙結果を覆せないと分かっていても、自分たちの勝ちだと考えていた。実際、勝っていた。あんな大混乱になるまでは」

<本誌2021年1月26日号掲載>

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中