最新記事

アメリカ政治

議会突入の「戦犯」は誰なのか? トランプと一族、取り巻きたちの全内幕

The Roots of the Capitol Riot

2021年1月18日(月)16時20分
ビル・パウエル(本誌記者)

magw210118_Trump_supporter.jpg

バノン(左)、長男のトランプJr(中)、フリン(右)らは大統領選で不正が行われたと執拗に主張した FROM LEFT: ANDREW KELLY-REUTERS, DARREN HAUCK/GETTY IMAGES, JONATHAN ERNST-REUTERS

トランプは2人には早くから、平和的に退任するつもりだと話して安心させていたという。11月26日には、選挙人の投票結果が認定されたら退任するかと記者に問われて、「もちろん、そうするつもりだ」と答えている。

もっとも、トランプはこう付け加えずにいられなかった。「しかし、今から1月20日までに多くのことが起きるだろう。大規模な不正が発覚した。まるで第三世界の国だ」

暴走する弁護団の主張

その頃には既に、不正疑惑を追及するトランプの試みは混乱していた。陣営に加わったシドニー・パウエルは、フリンがロシア疑惑をめぐってFBIに偽証した罪で起訴された際に弁護人を務めてトランプの目に留まった人物だ(フリンは罪を認めたが後に撤回。昨年11月にトランプが恩赦した)。

フリンはホワイトハウスにパウエルを同行した。11月中旬の記者会見でパウエルはジュリアーニらと並んで立ち、次々に陰謀論を繰り出した。投票集計機メーカーのドミニオン・ボーティング・システムズの裏にベネズエラがいるという主張も、その1つだ。

パウエルの主張はあまりに荒唐無稽だったため、ホワイトハウスの法律顧問パット・シポローニは陣営を代表する立場でしゃべらせるべきではないとトランプに助言した。

トランプの家族もパウエルの発言に「ドン引き」していたと、ホワイトハウスのスタッフは明かす。11月22日にジュリアーニと陣営の弁護士ジェナ・エリスは声明を出した。いわく、「シドニー・パウエルは......トランプの法律チームの一員ではなく、トランプが個人的に雇った弁護士でもない」。

パウエルを引っ込めることを渋々認めたトランプだが、「選挙は盗まれた」という思い込みは揺るがなかった。ジュリアーニとエリスは重要な激戦州で不正投票がなかったかを調べ始めた。

トランプが気を良くしたのは、イーストマンが保守系テレビのFOXニュースとニュースマックTVに出演し、いくつかの州の選挙人票は憲法上無効だと主張したことだ。

その論拠は? それらの州では、地方裁判所が州議会の承認なしに郵便投票に関するルールを変えていた。例えば郵便投票の署名が有権者登録ファイルの署名と一致しなくても有効と見なされる、といった具合に。合衆国憲法第2章には大統領選挙で「各々の州はその立法部が定める方法により......選挙人を任命する」と明記されている。

イーストマンによれば、ペンシルベニア、ジョージア、アリゾナの各州では立法部、つまり州議会の役割を裁判所か州務長官が奪ったため、これらの州の選挙人票は憲法に照らせば無効だというのだ。

目的は4年後の再出馬

ラジオ司会者のレビンは11月末からこの主張を毎晩自分の番組で流し始めた。1月6日に連邦議会で選挙人票の確定作業が行われるときに、マイク・ペンス副大統領が一部の選挙人票を無効と宣言する──トランプはそんな展開に望みを託すようになった。

この主張の法的根拠はともあれ、法律顧問も含めホワイトハウスのスタッフはこの頃には裁判で選挙結果を覆すのは難しいと考え始めていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ戦争「世界的な紛争」に、ロシア反撃の用意

ワールド

トランプ氏メディア企業、暗号資産決済サービス開発を

ワールド

レバノン東部で47人死亡、停戦交渉中もイスラエル軍

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中