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米議事堂乱入に中国は「狂喜」するが......信じたいアメリカの修復力

2021年1月10日(日)18時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

ドイツのメルケル首相は「怒りと悲しみを感じる」と沈痛な面持ちで嘆いた。

イタリアのコンテ首相は「暴力は民主主義の権利と自由の行使とは相容れない」とツイッターに書き込んだ。

カナダのトルドー首相は「カナダ人は 深く心を乱され、悲しんでいる 。アメリカの民主主義は支持されなければならない」と述べ、「暴力は民意を覆すことには成功しない。アメリカの民主主義は支持されなければならない」とツイートした。

さて、日本は――?

日本の民主主義はアメリカから「与えられた」あるいは「強要された」ものであり、それをありがたく頂きはしたが、自ら命を懸けて勝ち取ったものではない。日本には「民主や自由」といった普遍的価値観の土壌が浸み込んでいないのだろうか。政権与党に忖度をするという「美徳」はあっても、民主や自由のために命を懸けることを尊ぶ魂があるとは思いにくい。

だからアメリカの政権与党というか、現大統領に対して「民主が死んだ」として非難するような勇気はないだろう。日本の「民主」自体が、存在しているのか否かさえ、疑問なのだから。

中国のネットに面白いジョークが載っていた。

――アメリカ人とロシア人が「どっちの国の方が言論の自由があるか」に関して論争していた。アメリカ人が「もちろん我が国に決まっている。アメリカでは大統領の悪口をいくらネットに書いても捕まったりはしない」と言った。するとロシア人が「それは素晴らしいね」と言った。そして「でも、あなたたちアメリカ人はネットで大統領のことを礼賛したりすることができるのか?」聞いた。アメリカ人は黙ってしまった。

今のところ、トランプ大統領のツイートは永久に禁止されているそうだ。

これもアメリカの「自由と民主」の一つかもしれない。一民間企業ではあっても、すでに現在の主要な「メディア」となってしまっているプラットフォームに普遍的価値観による判断を下す力を与えてしまっているという「社会の力」が働いているのだから。

時間はかかるだろうが、アメリカはこうして、混沌の中から何かを生み出していく可能性もある。

ただ何れにせよ、トランプの登場はアメリカの「深い病」を浮き彫りにしてしまった。

民主への修復力は信じたいが、この「病」の根は深い。

米中覇権競争のゆくえに計り知れない陰を落とすことだろう。それを憂う。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。


中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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