最新記事

中国

米議事堂乱入に中国は「狂喜」するが......信じたいアメリカの修復力

2021年1月10日(日)18時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

何といっても中国はトランプ政権から「民主がない」「民主を弾圧している」と非難されて多くの制裁を受けてきたので、「これがアメリカの民主なのね!」と喜ぶのも、わからないではない。

かつて中国では公安関係者が巷での小さな暴動を起こした人に致命傷になるような銃を発砲した場合など「アメリカだったら、足に向けて発砲して逃げられないようにするだけなのに...」と、中国の公安関係者の「非民主性」と「残虐性」を非難し、アメリカに憧れたものだ。中国の若者にとってもアメリは「憧れの民主の砦」だったのだ。

しかし、若いネットユーザーたちもアメリカの「民主」の実態を知ってしまった。

アメリカ民主の修復力

それでもなお、アメリカの民主に対する修復力を信じたい。

何よりも注目したいのはペンス副大統領の対応だ。

ペンスはこれまで最も忠実なトランプ政権の閣僚であったはずだが、それでもこの乱入に関しては毅然として抗議している。日本時間で1月7日に入ってから、乱入者が排除され合同会議が再開されたが、再開に当たってペンスは以下のように述べている。

――アメリカ議会の歴史において暗黒の日になった。ここで起きた暴力を可能な限り強い言葉で非難する。大きな混乱を引き起こした人たち、あなたたちは勝利しなかった。暴力が勝利することはない。自由こそが勝つ。世界の国々は、われわれの民主主義の回復力と強靭さを目の当たりにするだろう。

トランプはペンスを裏切り者と罵ったが、しかし「民主主義は死なず」という印象を与えた。共和党のブッシュ元大統領も「これは政治が不安定な国の選挙結果で争いが起きたときに起きる現象であって、民主国家の私たちの国(アメリカ)で起きることではない」として強く非難した。

アメリカの民主主義への深い魂は、どんなに人種差別や貧富の格差が生まれようとも、粘り強い修復力を持っている。日本のような借り物の民主主義とは違う。自分で勝ち取った民主だからだ。

G7の中で意思表示をしないのは日本のみ

G7の中で今般のアメリカの議事堂乱入に関して非難声明を出していないのは日本だけではないだろうか。

フランスのマクロン大統領は英語でビデオメッセージを出し、「世界で最も歴史のある民主主義の国の一つで、現職大統領の支持者が正当な選挙結果に対して暴力による異議を唱えた。これにより投票という民主主義の普遍的理念が傷ついた」と訴え、イギリスのジョンソン首相は「トランプ大統領が人々に議会に向かうよう促した」と強調して、自由で公正な選挙結果を疑い続けたことが原因だと非難している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中