後手に回った緊急事態宣言 効果なければ「ポスト菅」の引き金に
菅義偉首相が検討を決めた対緊急事態宣言の再発出は、世論の目には小池百合子・東京都知事らに押し切られた形に映り、総選挙の時期が迫る与党内から不満の声が聞こえる。写真は緊急事態宣言の再発出の検討を表明したあと、記者会見場を出る菅首相(中央)。4日、東京で撮影。(2021年 ロイター/Yoshikazu Tsuno)
菅義偉首相が検討を決めた対緊急事態宣言の再発出は、世論の目には小池百合子・東京都知事らに押し切られた形に映り、総選挙の時期が迫る与党内から不満の声が聞こえる。首都圏1都3県の飲食店に的を絞ったこのやり方で効果が出なければ、支持率はさらに下がり、ポスト菅をめぐる政局の引き金になるとの見方が出ている。
4知事連名という構図
「昨年末の時点で菅さんが先手を打った方が良かった」。自民党のある幹部は5日、ロイターの取材にこう答えた。
昨年12月25日のクリスマスに開いた記者会見、菅首相は緊急事態宣言の発出には消極的な姿勢を示していた。事態が動きはじめたのは6日後の大晦日。東京都の新規感染者が初めて1000人を超え、首相は急きょ関係閣僚と対応を協議した。年明け1月2日には東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の4知事が揃って西村康稔経済再生相と会談し、3時間以上にわたって緊急事態宣言の発出を迫った。そして4日、菅首相は宣言発出の検討に入ると表明した。
菅首相が緊急事態宣言に後ろ向きだったのは、ようやく持ち直してきた経済への打撃を懸念したためだ。安倍晋三政権下で出した昨春の緊急事態宣言後、4─6月の国内総生産(GDP)は戦後最大の落ち込みを記録した。「コロナ対策が後手に回っているとの批判から、首相の年頭会見で緊急事態宣言の検討を表明せざるを得ない流れになった」と、事情を知る政府関係者は言う。
政府・与党関係者が特に気にかけているのが、1都3県の知事が一致団結して菅政権に対策を迫ってきた構図だ。「小池知事1人で緊急事態宣言を要請しただけならば、小池氏のパフォーマンスで終わった」と、前出の自民党幹部は指摘する。「4知事連名で要請し、小池さんに菅さんが押された格好だ」と、同幹部は語る。
「1都3県に出すの遅いでしょ、出すの遅すぎてその他の県にも多分蔓(まん)延してる」、「遅きに失した感は否めないが、これは経済へのダメージを少しでも避けたい菅総理と医療現場の崩壊を防ぎたい知事との攻防」──4日の年頭会見後、短文投稿サイトツイッターには菅首相が緊急事態宣言の検討を表明したことを巡ってユーザーの投稿が相次いだ。
4知事は独自の対策として、住民に対して午後8時以降の外出自粛も呼びかけることを決めた。