後手に回った緊急事態宣言 効果なければ「ポスト菅」の引き金に
五輪開催可否が大きな要因に
菅政権は昨年9月の発足当初、報道各社の世論調査で70%前後と高い内閣支持率でスタートした。だがコロナ対応への批判から、昨年末時点で30ポイント前後支持率が急落している。後手に回ったと批判を浴びながらも、経済活動を重視し、景気の浮揚を人気回復につなげたい菅政権は、あくまで限定的な緊急事態宣言にこだわっている
全国で広範に行動制限をかけた昨春と違い、今回は1都3県の飲食店に絞って規制する。小中学校を一斉に休校にしたり、イベントの開催を一律に制限することもしない見通しだ。菅首相は4日の年頭会見で、北海道や大阪府では飲食店の時短営業で感染者が減少傾向に転じたと強調した。
「感染症と文明」などの著書がある長崎大学熱帯医学研究所の山本太郎教授は、「緊急事態宣言の内容が現時点でわからないためコメントが難しい」としつつ、「人と人の接触を減らし、ウイルスの感染速度を減らすことにつながるのであれば効果はある」と話す。
自民党の中堅議員は「感染拡大にブレーキがかかり、緊急事態宣言に一定の効果があったと判断され、ワクチンが普及し、東京五輪・パラリンピックも予定通り実行できるようならば、政権再浮揚のきっかけになる」と期待する。その一方で、政権が期待していたような効果が出なかったり、宣言の対象と期間が次第に広がるようなことがあれば、「支持率の低下につながり政局要因だ。ポスト菅をめぐる議論が出てくるだろう」と予想する。
衆議院は、任期満了を迎える今年10月までのどこかの時点で総選挙が行われる。菅首相を顔にして自分たちが選挙で勝てるのか、自民党所属議員は値踏みをしている。コロナ以外にも支持率に影響する材料は山積みで、1月18日に始まる通常国会では安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭問題や吉川貴盛元農相の収賄疑惑問題などを野党が追及するのは必至だ。
とりわけ東京五輪の開催可否は大きな要素になりそうで、「3月に開かれる国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で五輪中止が決まれば、国会は大混乱。菅首相で衆院選は無理との声が出る」と、自民党関係者は話す。
与党内ではポスト菅候補として、石破茂元幹事長や野田聖子幹事長代行、岸田文雄元政調会長、河野太郎行革相、茂木敏充外相などの名がすでに取りざたされている。
時事通信の元解説委員で、政治評論家の原野城治氏は「菅首相で衆院選を戦えないとの声が高まれば、春の予算成立後の菅首相辞任もあり得る」とみる。「菅氏に解散できる求心力はない。自民党は新総裁を模索するだろう」と語る。
(竹本能文 編集:久保信博※)
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