BLM支持のBTSを生んだ韓国で、反差別運動が盛り上がらない訳
RACISM, KOREAN STYLE
一方、社会に大きな亀裂を生むような差別問題こそなくても、韓国の国内にも差別は存在している。
韓国で働く約150万人の外国人労働者たちは、過酷な環境での生活と就労を強いられる半面、社会の一員になる機会は与えられない。不法滞在者は、警察による強制捜査で命を失うことすらある。2018年に内戦下の中東イエメンから500人以上の亡命希望者が韓国にやって来たときは、約70万の人々が政府に強制送還を求める請願を行った。
韓国政府はこの数十年、韓国人男性と外国人女性の結婚を奨励してきた。主に農村の男性が結婚相手を見つけて、子供をつくれるようにするためだ。ある調査によれば、そうした外国人花嫁(主に東南アジア出身)の半分近くが夫による暴力を訴えているという。
もちろん、人種差別は韓国だけの現象ではない。東アジアのほかの国々にも差別の問題がある。中国政府は、新疆ウイグル自治区などで少数民族を大量に強制収容所に送ったり、強制的に不妊手術を受けさせたりしている。
日本でも、在留資格を持っていない外国人が入管施設に長期間・無期限に収容されている。昨年は、抗議のハンガーストライキを行っていた収容者の男性1人が死亡した。
差別は、コロナ禍でも起きている。今年2月に新型コロナウイルスの感染拡大がニュースになり始めると、韓国、日本、香港、ベトナムではすぐさま、飲食店が中国人客を締め出そうとした。
ただし、韓国社会にも変化の兆しはある。BTSなどのKポップアーティストが反差別の姿勢を鮮明にしていることはその1つだ。
若い世代には変化の兆しも
韓国人の若いアーティストたちがそのような行動を取るようになった背景には、アメリカの大勢のファンの存在がある。昨年、アメリカの音楽専門チャンネルMTVがKポップアーティストを主要な賞にノミネートしなかったとき、ファンはソーシャルメディアでMTVの人種差別を批判し、授賞式をボイコットした。そうしたファンの多くが黒人だった。
それに、BTSのプロデューサーも述べているように、グループの音楽的アイデンティティーの土台には黒人音楽がある。Kポップの源流は、ヒップホップとR&Bなのだ。
しかし、社会に変化を起こすためには、まず教育を変える必要がある。韓国の教育は、子供たちの間に不健全なレベルのナショナリズムを育てている。それが東アジアの国々に共通する差別意識と、過去の出来事に基づく反感、そして過度に同質性の高い社会ならではの文化的無知と相まって助長されている。