最新記事

韓国

韓国政府、「K-防疫」を過信してワクチン手配に出遅れた?

2020年12月21日(月)16時50分
佐々木和義

首都圏の飲食店の営業時間を夜9時までとし、カフェの店内利用を禁止してテイクアウトのみ可能としたが、帰宅時間が集中する夜9時過ぎには公共交通機関が混雑し、また店内飲食が可能なファストフード店などの軽飲食店がカフェ代わりに利用する人々で混雑する状況に陥った。

密を避けるため人が集まる店などの利用を規制した結果、規制されていない場所に人々が集中し、接触リスクが増したのである。

ワクチンの手配も出遅れた

感染の拡大防止に失敗した韓国政府はワクチンの手配も出遅れた。日本や米国、英国など、新型コロナウイルスが拡散した当初からワクチンの開発と手配に取り組んだ。日本政府はアストラゼネカとファイザーのワクチンをそれぞれ6000万人分、モデルナのワクチンを2500万人分など7月頃から購入契約を開始した。欧米と比べて遅いと指摘される日本だが、韓国はさらに遅かった。

韓国政府は7月頃から各国の製薬会社と協議をはじめたが、本格的な契約交渉を開始したのは、第3波に襲われた11月末だった。

英国とカナダは7種類、米国とEUは6種類、日本は3種類のワクチンを購入するなど、各国が複数の製薬会社と購入契約を締結するなか、韓国は国内の製薬会社に生産の一部を委託する予定のアストラゼネカのワクチンのみ1000万人分を確保した。

ワクチンの購入が決まると文在寅大統領は「トンネルの出口が見えた」と安堵したが、直後の12月9日、衝撃が襲った。アストラゼネカのワクチン開発を総括する研究所長が、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認が来年半ばになるという見通しを発表したのだ。ファイザーとモデルナはFDAが緊急使用を承認しており、来年2−3月には日本でも接種がはじまると見られるが、韓国は見通しが立たなくなった。

韓国政府は、16日午後、FDAとは関係なく韓国食品医薬品安全庁がアストラゼネカのワクチンの審査を進めると発表したが、一方、「FDAが許可していないワクチンを韓国当局が許可できるのか」「許可を出して果たして安全といえるのか」など、市民は不信を募らせている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ金融システムは強固、家計に高金利の影響も=中銀

ワールド

米重要インフラのサイバー対策強化へ、大統領が覚書 

ワールド

米コロンビア大、警官隊が反イスラエルデモ参加者排除

ワールド

EUがメタに調査開始、偽情報対策を問題視 欧州議会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 6

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 7

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中