最新記事

中国

中国TPP参加意欲は以前から──米政権の空白を狙ったのではない

2020年11月23日(月)20時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

オンライン形式で開催されたAPEC2020に出席した習近平(11月19日)  APEC CEO DIALOGUES MALAYSIA 2020/REUTERS TV

習近平は20日のAPEC首脳会談でTPP11 への参加意欲を表明したが、2017年のアメリカ離脱直後に表明しており停止条項に注目していた。RCEP締結を優先しただけで米政権の空白を狙ったわけではない。

習近平がAPECでTPP11 への参加意欲を表明

11月20日夜からリモートで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で、習近平国家主席はCPTPP=TPP11 (環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)への参加に意欲を示した。

TPP11 は今さら説明するまでもないが、トランプ政権が誕生するとすぐに(2017年1月)トランプ大統領がTPP(12ヵ国)からの離脱を宣言したため残り11ヵ国で新たに締結した協定だ。

習近平は20日のAPECのスピーチで「世界とアジア太平洋地域は大きな変革期にあり、新型コロナウイルスの感染拡大がそれを加速させている」と述べ、2017年以降何度もくり返してきた「単独主義や保護主義に反対し、自由で開かれた貿易や投資を促進させ、早期にアジア太平洋地域の自由貿易圏を構築しなければならない」という主張を強調した。

これに関して日本の大手メディアは「アメリカの大統領選挙による政権の空白に乗じた決定だ」と解説しているが、これは不適切な解釈だ。

なぜなら今年5月28日、李克強首相が全人代終了後の記者会見で既にTPP11への参加について「中国は前向きで開放的な態度を取っている」と述べているからだ。そもそも2017年の時点で中国外務省は正式に参加に意欲的である旨の発言をしている。

2017年1月に既に意思表明

2017年1月24日の中国の外交部記者会見で、中国はすでにアメリカが離脱した後のTPPへの参加に意欲を表明している。

というのはトランプがTPPを離脱する文書に正式に署名するとすぐに、オーストラリアのスティーブン・チョーボー貿易・観光・投資大臣は中国に「アメリカが抜けたので、TPPに加盟しませんか?」と打診してきたのだ。

当時、オーストラリアのターンブル首相とトランプ大統領は犬猿の仲で、トランプ大統領はターンブル首相との電話会談を途中で打ち切り「過去最悪の対談だった」と述べたことは記憶に新しい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ゴールドマン、10─12月利益予想上回る 株式ト

ビジネス

米シティ第4四半期、利益が予想上回る 200億ドル

ビジネス

JPモルガン、24年は過去最高益 投資銀が好調で第

ビジネス

米CPI、12月は前年比2.9%上昇に加速 インフ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中