最新記事

中国軍事

習近平、人民解放軍に戦勝を指示「死も恐れるな」

'Do Not Fear Death': China's Xi Orders Soldiers to Train Harder to Win Wars

2020年11月27日(金)17時20分
ジョン・フェン

香港の海軍基地で習近平のポスターの前に直立する人民解放軍兵士(2017年) Bobby Yip-REUTERS

<米バイデン政権発足を前に、南シナ海、台湾海峡、中印国境などあらゆる前線での優越を印象づける>

中国の習近平国家主席は11月25日、自らが主席を務める中央軍事委員会の訓練会議で兵士たちの訓練強化を指示。戦争に勝利するために、死も恐れてはならないと述べた。国営メディアの新華社通信によれば、習は軍の幹部と兵士らに対して、「実戦と同じ条件で」戦争に備えるよう命じた。

北京にある京西賓館で行った演説の中で習は、人民解放軍は「新たな時代」に突入すると述べ、訓練を強化して作戦能力を向上させるよう指示。さまざまな技術を統合し、軍のあらゆるレベルの要員が科学技術に関する知識を持つことが重要だと強調した。

習は、中国の国家安全保障をめぐる状況が変化し、軍の近代化が推し進められ、また従来と異なる戦闘形態が台頭しつつあるなか、軍は「改革の新たな段階」に突入していると説明。人民解放軍を「世界一流の軍隊」にすることが、共産党の長年の目標だと強調した。

200万人の現役兵と50万人の予備役を擁する中国軍は現在、複数の前線で軍事演習を展開し、また他国軍との睨み合いを続けている。空軍の偵察機や戦闘機が、自治を維持する台湾の上空を飛行し、海軍の艦船が南シナ海を航行している。

2050年までに「世界一流の軍隊」に

11月には、中国海軍が台湾海峡で2度にわたって大規模な軍事演習を実施。中国政府は台湾の現自治政府を「分離独立主義」と見なしており、国営メディアは、実弾発射を伴う一連の上陸訓練は、中国政府から台湾自治政府に対する直接的な「強いメッセージ」だとしている。

また中国南西部の国境地帯では、中国軍とインド軍の睨み合いが8カ月近くにわたって続いている。夏には両国が領有権を主張する(インド北部の)ラダック地方の実効支配線沿いで軍事衝突が発生し、インド軍の兵士20人が死亡。中国軍の兵士も複数(正確な人数は不明)死亡したと報じられている。

インド政府と中国政府は、ヒマラヤ山脈にある同地方での緊張緩和を目指し、第9回軍高官級会談に向け準備を進めているが、どちらの側にも撤退の兆候はない。

米シンクタンクのランド研究所は、人民解放軍に関する2020年度の報告書の中で、中国軍は空、海と情報の分野で優位性の確保を目指していると指摘した。実際に中国軍は、軍事戦略や作戦実行ガイドラインにビッグデータや人工知能(AI)を導入することを積極的に検討している。

「習近平と参謀たちは、2035年までに軍の『近代化を達成』するという目標のさらに先を見据え、軍事理論や軍事構想を発展させて2050年までに『世界一流の軍隊』をつくることを目指している」と報告書は指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、自動車関税の影響軽減へ 29日実施=米

ビジネス

アングル:欧州中小企業は対米投資に疑念、政策二転三

ワールド

カイロでのガザ停戦交渉に「大きな進展」=治安筋

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、週内の米指標に注目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中