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韓国の外タレ「さゆり」の選択「今日から私は母になる」 体外受精選んだ日本女性が儒教の国を変える

保守的だった韓国社会にも変化

ところが、今月18日に公表された、韓国統計庁が毎年発表している「社会調査結果」の2020年版の統計によると、韓国人の13歳以上の男女の30.7%(男性32.6%、女性 28.8%)が「未婚でも子供をもつことができる」に賛成している。また、59.7%が「結婚しなくても同棲だけでいい」と答えるなど、韓国人はこれまで結婚について比較的保守的なイメージがあったが、ここ数年で変化の流れが速まっているように感じる。

さゆりさんが施術のために日本へ帰国したことも、韓国では大きく取り上げられた。彼女が日本で精子バンクを利用したのは、現在韓国では未婚者への人工授精施術が不可能だったからだ。

現在日本を含む、アメリカ、イギリス、スウェーデン、スペイン、ベルギーなど多くの国が未婚女性への人工授精施術が認められ、出産事例も多い。一方、韓国では2017年に制度改正され、医療機関が未婚女性への人工授精施術をしても処罰されないことにはなっているものの、「大韓産婦人科学会内部倫理規定」で禁じられており実際には施術ができない状態だ。

この点について、韓国では今、女性の権利・妊娠の選択自由をテーマに議論の的になっている。

国会議員たちもさゆりに共感?

さゆりさんの出産については、韓国の公営放送KBSのニュースでも大きく取り上げられ、規定改正への動きが国会議員たちの間でも論議されるようになった。特に「共に民主党」のハン・ジョンエ政策委議長が先頭に立ち、関連法律検討と改善をするよう働きかけている。

先日の公開会議でハン議員は、「保健福祉省は、不必要な指針の修正を行うため、ただちに協議措置を行ってください。 指針の補完と併せて制度改善に必要な事項については、国会で検討いたします」と宣言した。さらに、「共に民主党」キム・テニョン院内代表も、国会でも制度改善にむけて調整を始めると発言し、今後この問題に対する議論が本格化する見込みである。

ひとりの日本人女性の行動が、韓国の女性たちの生き方を左右する規制見直しのきっかけとなったのだ。

今、家族の形は様々である。筆者の友人のブラジル人男性は、同性婚をしてパートナーと子供を育てている。このように欧米では、同性同士のカップルが養子をもらうことはすでに、特別ではない世の中になった。

「子どもには、男女の親が2人いなくてはいけない」「シングルペアレントでは、子供は不幸になる」「血が繋がっていなくては自分の子供ではない」「女は子供を産むべきだ」
今もなお、出産については様々な意見がある。どの意見が正しいか、人それぞれでかまわない。

ただし、それを押し付けることはあってはならない。誰が何と言おうと、技術の進歩により選択肢が増えていき制度改正は進む。これからはシングルであっても、未婚であっても、男女/女女/男男でも、子供を産んだり育てたりする権利を選べる世の中になっていくのだ。いつの日か男性の妊娠技術が開発されれば、家族の形はさらに広がるのではないだろうか。

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