アメリカ大統領選挙めぐりトランプが募る法廷闘争募金 大半の使途は「その他」、その実態は──
トランプ米大統領は、大統領選で不正が行われたという根拠のない主張により、選挙結果を否定しようとしている。写真は8日、アリゾナ州フェニックスの開票所前で、トランプ氏支持を訴える支持者(2020年 ロイター/Jim Urquhart)
トランプ米大統領は、大統領選で不正が行われたという根拠のない主張により、選挙結果を否定しようとしている。そうした中、同氏の陣営は選挙を巡る法廷闘争の資金手当てに協力を求めるとして、支持者に電子メール攻勢を掛けている。「左派はこの選挙を盗もうとするだろう!」と、あるメールには書かれていた。
ところが、これに応えてトランプ氏の草の根支持者が例えば少額を献金しても、訴訟費用には一切流れない見通しだ。ロイターが献金要請メールの法的文言を精査したところ、こうしたことが分かった。
メールに記された資金調達に関する開示文書に基づくと、ある人の献金が8000ドル(約84万円)を超えなければ、大統領選関連の訴訟費用を賄うために設立された「再集計基金」には1ドルも入らない。この場合の訴訟とは、票の再集計や「不正行為」の疑いを巡る提訴のことだ。
支持者が電子メールの献金要請書を開くと、「公的選挙防衛基金」と題されたウェブサイトに誘導され、「選挙日が過ぎてもその結果を守り、戦い続けるため」、定期的な献金を登録するよう求められる。
細かい文字を読むと、大半の献金はその他の優先事項に流れることがはっきり分かる。
献金の大部分は、9日に設立されたトランプ氏のリーダーシップ政治行動委員会(PAC)である「セーブ・アメリカ(アメリカを救おう)」と、共和党全国委員会(RNC)に入る。連邦選挙委員会のルールでは、いずれの団体も資金の使途について大きな裁量権を持つ。
トランプ氏陣営とRNC、「セーブ・アメリカ」はいずれも、ロイターのコメント要請に応じなかった。
セーブ・アメリカのようなリーダーシップPACはしばしば著名な政治家が設立し、自分ではない他の候補者向けに資金を支出したり、あるいは自分の旅行やホテル滞在費などの費用に充てたりもする。
開示文書は、トランプ氏とRNCは、献金を他の政治的用途や他の選挙戦に回すことができるとする。例えば来年1月にジョージア州で行われる見通しの上院議員決選投票だ。この投票は、共和党が上院で多数派を維持できるか否かを決するもので、選挙費用は米国の歴史上、屈指の高さになる公算が大きい。
トランプ氏の献金要請サイトでは、「公的選挙防衛基金」、「今すぐ献金を」という題名が大文字でバナー表示されている。
ページをスクロールしていくと、献金者は細かい文字列にたどり着き、そこには献金が「セーブ・アメリカ」とRNCに分割され、前者に60%、後者に40%入ると記されている。1件の献金での「セーブ・アメリカ」への法定上限は5000ドルで、開示文書によれば、献金がこの額を超えなければ、その献金からトランプ氏の「再集計」基金に流れる金額はゼロになる。