アメリカ大統領選挙でのトランプ敗北と消え去ることのない「トランプ主義」
テキサス大リンドン・B・ジョンソン公共政策大学院のビクトリア・デ・フランセスコ・ソト氏は「テキサス州のメキシコ国境沿いの地域は、フロリダなど中南米系の市民が非常に多い他の地域と同じように保守的で庶民的な雰囲気が非常に濃厚だ。政治にも人間的なふれ合いが欠かせない」と指摘。大いに盛り上がったトランプ氏の集会に対し、バイデン氏がそうした集会を避けて地味な選挙戦を繰り広げたことが、中南米系の有権者を獲得する上でトランプ氏に有利に働いたのは間違いないとの見方を示した。
メキシコ国境沿いに暮らす中南米市民は移民問題でかなり保守的な考えをもっており、トランプ氏の移民問題へのスタンスが有権者の間で問題にならなかったのは当然だという。
この地域は新型コロナによる死者が特に多かった。それでも民主党員でヒダルゴ郡裁判官のリチャード・コルテス氏は、有権者は新型コロナよりも失業を恐れており、経済再開を訴えるトランプ氏の主張が受け入れられたと述べた。
メキシコ国境沿いの地域はカトリック教徒が多く、トランプ氏の中絶反対の姿勢や、連邦最高裁で保守派の判事3人を指名したことも支持を集めた。
さらにコルテス氏は、「タフさ」を好む中南米系の間でトランプ氏の「強がり」な姿勢が支持を高めたとの見方を示した。「単純に、トランプ氏の方がタフだと思った有権者もいた」
岩盤支持層、隠れトランプともに健在
世論調査によると、トランプ氏は今年、郊外に住む女性と高齢の有権者層では支持率が一貫して低下傾向にあった。しかし、キリスト教福音派や、トランプ氏の減税や支持する根っからの共和党員、かつては民主党支持だった白人・非大卒の有権者など、忠実な信奉者からの支持はまったく失っていない。こうした支持層は依然として経済についてトランプ氏を信頼し、バイデン氏は極左に利用されている老いぼれだというトランプ氏の主張に喝采を浴びせている。
ただ、共和党陣営の幹部によると、同党はトランプ氏の集会で熱狂をあおっているだけではなく、もっと大規模な取り組みを行い、新たなトランプ支持者の獲得を図っている。対象の多くはあまり選挙に行かず、共和党員ではない可能性もある有権者だ。
トランプ氏の集会への参加者はオンラインで登録し、携帯電話の番号を書き込まなければならない。共和党の選対チームはこうした情報を使い、前回の大統領選で投票しなかった有権者や、これまで投票したことがない有権者を特定している。つまりトランプ氏の集会は「大規模なデータ収集イベントだ」(選対チームの広報担当者)という。
集会とデータ分析の組み合わせは選挙戦で有力な武器となり、共和党がトランプ後になっても築き続けることができるデータベースを作り上げた。
トランプ陣営と共和党はトランプ氏の支持基盤の拡大に多額の資金をつぎ込んだ。共和党の幹部によると、今年の選挙戦開始以降、共和党は250万人のボランティアを動員、2940万世帯を戸別訪問し、激戦州での電話での支持訴えは1億2890万回に達した。
世論調査担当者の多くが、共和、民主両党の支持率が拮抗する主要な「スイングステート」の一部でトランプ氏支持を実際よりも低く見積もってしまったのは、トランプ陣営がこうして新たな支持者を掘り起こしたのが原因かもしれない。もう1つの可能性は「隠れトランプ支持者」の存在だ。
ペンシルベニア州バックス郡のトランプ氏の集会に来ていたライアン・ランダースさん(46歳)によると、トランプ氏支持の友人の中には世論調査の電話でうそをついた人もいるという。
ビル・クラッチャーさん(48歳)も「トランプ氏支持なら意見は言えない。トランプ氏のサインを持っていたら、ひどい目にあわされる」と話し、左派の人々をはばかって支持を隠している人々がいることを明かした。クラッチャ-さんは過去にオバマ氏とヒラリー・クリントン氏に投票したが、今年はトランプ氏を支持した。
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