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宇宙土星の衛星「タイタン」で、太陽系の大気で確認されたことのない「シクロプロペニリデン」が検出
メタンを主成分とする深さ100メートル超の湖も発見されているタイタン NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/University of Idaho
<NASAは、南米チリ・アタカマ高地のアルマ望遠鏡(ALMA)で観測したデータを分析し、「タイタンの大気中でシクロプロペニリデンを初めて検出した」との研究論文を発表した......>
土星の最大の衛星「タイタン」は、太陽系の衛星で唯一、地球の大気密度の4倍に相当する豊富な大気を持ち、地球以外で唯一、地表に液体が安定的に存在する奇妙でユニークな天体だ。そしてこのほど、この天体を覆う大気中で、地球上では実験室でしか存在しえない「シクロプロペニリデン(C3H2)」が初めて見つかった。
これまで太陽系の大気中では確認されていなかった
アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターの研究チームは、南米チリ・アタカマ高地のアルマ望遠鏡(ALMA)で2016年と2017年に観測したデータを分析し、2020年10月15日、学術雑誌「アストロノミカルジャーナル」において「タイタンの大気中でシクロプロペニリデンを初めて検出した」との研究論文を発表した。
シクロプロペニリデンは、他の分子に反応して、別の物質を形成しやすい。そのため、低温で拡散しやすく、化学反応が促されづらい星間空間では見られるものの、これまで太陽系の大気中では確認されていなかった。
シクロプロペニリデンがタイタンの大気中のみで見られる原因については明らかになっていないが、今回は、シクロプロペニリデンが反応する他の気体が少ない大気の上層部を観測したため、シクロプロペニリデンが検出できたのではないかと考えられている。
タイタンの大気は窒素がその多くを占め、地表には炭化水素の雲や雨、川、湖がある。タイタンの環境は、地球の大気が酸素の代わりにメタンで占められていた25〜38億年前の地球とよく似ているとみられており、タイタンの地表には、地球での生命の誕生に関与した分子が存在する可能性があると考えられてきた。
NASAでは、2027年にタイタン探査用回転翼機を打ち上げる
シクロプロペニリデンは、3つの炭素原子が環状に結合した環式化合物の一種だ。DNAやRNAの核酸塩基は、このような環状構造をベースとしていることから、シクロプロペニリデンは、タイタンで生命を形成させうる、より複雑な化合物が生成される前の段階、前駆体としても、注目されている。
NASAでは、2027年にタイタン探査用回転翼機「ドラゴンフライ」を打ち上げ、タイタンの居住可能性や前生物化学の進化などを詳しく調査する計画だ。