最新記事

香港

【香港人の今1】「攬炒(死なばもろとも)」を世界に知らしめた・27歳国際工作組織創設者

RISING LIKE A PHOENIX

2020年11月26日(木)19時25分
ビオラ・カン(文)、チャン・ロンヘイ(写真)、雨宮透貴(写真)

magHK20201126-1-2.jpg

キリスト教協議会元議長 袁天佑(69) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

キリスト教協議会元議長 袁天佑(69)

今年5月、香港の20人の牧師・神学者がネットで実名を掲載して「香港2020福音宣言」を発表した。約1カ月後に香港国家安全維持法が施行されると、「国家分裂を策動する意図がある」と中国政府派の新聞に評され、袁天佑(ユン・ティン・ヤウ)牧師の名前も挙げられた。

昨年定年を迎えた袁だが、これで動きを止めることはなかった。社会問題に関する意見を各所へ提出し、それで教会内外から批判を受けている。

一番多い「罪名」は、宗教が政治に関わるなという指摘だ。「教会は信仰にだけ言及すべきと思う人がいる。しかし、信仰は生活のあらゆる事柄と関わっている。政治と関係ないわけはない」

抑圧や圧迫に対して教会が責任を逃れることはできないと、袁は考える。雨傘運動から逃亡犯条例改正案反対デモまで、デモ現場近くにある教会はデモ隊が避難・休憩できるよう何度も開放され、「善きサマリア人」の精神を発揮してきた。

聖書の「テモテへの第二の手紙」1章7節を、袁は香港人に贈る。「神が私たちに下さったのは、臆する霊ではなく、力と愛と慎みとの霊である」

magHK20201126-1-3.jpg

元記者・元立法会議員候補 何桂藍(30) PHOTOGRAPH BY CHAN LONG HEI

元記者・元立法会議員候補 何桂藍(30)

ネットメディア「立場新聞」の記者として人気だった何桂藍(グウィネス・ホー)は、メディアの新たな可能性を広げる野心を抱いていた。しかし政府が続々と報道の自由を狭めるなか、政治制度を変える必要性を実感した。

記者として、昨年7月の市民襲撃事件の現場をただ1人ライブ中継した。暴力にさらされても中継を続けたことで、「立場姐姐(姉さん)」として一気に知られるように。

今年1月には、報道の現場から議場を目指して歩み出した。「香港の選挙は既に『民主体現の場』ではなく、中国政府に対抗する場になった。街の力を議会へ持ち込み、香港人と歩んでいきたい」

何の第一歩は、今年7月の民主派の出馬を決める予備選挙に自身が立候補することだった。彼女は選挙区で得票トップだったが、政府は「『一国二制度』への支持が疑われる」との理由で、立候補申請を取り消した。9月の立法会選挙自体も、コロナ禍を理由に1年延期した。

記者でも議員でもなくなった彼女だが、毎日欠かさずに路上で演説している。「強硬な抗議手法に頼りすぎるのも良くない。民主化運動を進めるには、自分が得意なことをすればいい」

香港人にとって、政治改革への希望は人生の一部になった。「その価値観が揺るがなければ、状況が悪化しても民主化運動を支えられる」

<2020年11月24日号掲載>

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中