【香港人の今1】「攬炒(死なばもろとも)」を世界に知らしめた・27歳国際工作組織創設者
RISING LIKE A PHOENIX
キリスト教協議会元議長 袁天佑(69)
今年5月、香港の20人の牧師・神学者がネットで実名を掲載して「香港2020福音宣言」を発表した。約1カ月後に香港国家安全維持法が施行されると、「国家分裂を策動する意図がある」と中国政府派の新聞に評され、袁天佑(ユン・ティン・ヤウ)牧師の名前も挙げられた。
昨年定年を迎えた袁だが、これで動きを止めることはなかった。社会問題に関する意見を各所へ提出し、それで教会内外から批判を受けている。
一番多い「罪名」は、宗教が政治に関わるなという指摘だ。「教会は信仰にだけ言及すべきと思う人がいる。しかし、信仰は生活のあらゆる事柄と関わっている。政治と関係ないわけはない」
抑圧や圧迫に対して教会が責任を逃れることはできないと、袁は考える。雨傘運動から逃亡犯条例改正案反対デモまで、デモ現場近くにある教会はデモ隊が避難・休憩できるよう何度も開放され、「善きサマリア人」の精神を発揮してきた。
聖書の「テモテへの第二の手紙」1章7節を、袁は香港人に贈る。「神が私たちに下さったのは、臆する霊ではなく、力と愛と慎みとの霊である」
元記者・元立法会議員候補 何桂藍(30)
ネットメディア「立場新聞」の記者として人気だった何桂藍(グウィネス・ホー)は、メディアの新たな可能性を広げる野心を抱いていた。しかし政府が続々と報道の自由を狭めるなか、政治制度を変える必要性を実感した。
記者として、昨年7月の市民襲撃事件の現場をただ1人ライブ中継した。暴力にさらされても中継を続けたことで、「立場姐姐(姉さん)」として一気に知られるように。
今年1月には、報道の現場から議場を目指して歩み出した。「香港の選挙は既に『民主体現の場』ではなく、中国政府に対抗する場になった。街の力を議会へ持ち込み、香港人と歩んでいきたい」
何の第一歩は、今年7月の民主派の出馬を決める予備選挙に自身が立候補することだった。彼女は選挙区で得票トップだったが、政府は「『一国二制度』への支持が疑われる」との理由で、立候補申請を取り消した。9月の立法会選挙自体も、コロナ禍を理由に1年延期した。
記者でも議員でもなくなった彼女だが、毎日欠かさずに路上で演説している。「強硬な抗議手法に頼りすぎるのも良くない。民主化運動を進めるには、自分が得意なことをすればいい」
香港人にとって、政治改革への希望は人生の一部になった。「その価値観が揺るがなければ、状況が悪化しても民主化運動を支えられる」
<2020年11月24日号掲載>
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