最新記事

南シナ海

アジア歴訪のポンペオ、対中包囲で協力模索も微妙なズレ インドネシア外相「安定的で平和的な南シナ海を望む」

2020年10月29日(木)18時59分

インドネシアを訪問中のポンペオ米国務長官(写真左)は、南シナ海でインドネシアと協力する新たな手段を模索すると表明した。写真右はインドネシアのルトノ外相。提供写真(2020年 ロイター/Indonesian Ministry of Foreign Affairs)

インドネシアを訪問中のポンペオ米国務長官は29日、南シナ海でインドネシアと協力する新たな手段を模索すると表明した。また、米国は同海域における中国の「違法な」主張を受け入れないとし、自国の海域を守ろうとするインドネシアの取り組みを尊重するとした。

ポンペオ長官は米中間の緊張が高まる中、戦略的関係や経済関係の強化を目指し、現在アジア5カ国を歴訪中。

ポンペオ長官は、インドネシアのルトノ外相との共同記者会見で、南シナ海にあるナトゥナ諸島周辺の水域における主権保護に向けた同国の「断固とした行動」を称賛した。ナトゥナ諸島周辺では中国も領有権を主張している。

長官は、中国の主張は「違法」だと強調。「海洋安全保障で主要な国際貿易ルートが確実に保護されるよう新たな手段でともに協力していくことを期待する」と述べた。

ルトノ外相は、国際法が順守される「安定的で平和的な」南シナ海を望むとした。

ルトノ外相はインドネシアと米国が軍事調達、訓練、情報共有、海上警備における連携を推進することで防衛協力を強化すると述べた。

ただトランプ政権の中国に対する強硬な姿勢にインドネシア政府当局者は懸念を示している。ルトノ外相は「この困難な時期に包摂的な協力を模索する必要性を改めて強調した」とし、全ての国が世界の平和、安定、繁栄に向けた取り組みに関与する必要があると訴えた。

<経済協力>

ルトノ外相はまた、インドネシアの「自由で独立した」外交政策に言及し、ポンペオ長官に経済協力の拡大を求めたと明らかにした。

米国はインドネシアに対する一般特恵関税制度(GSP)適用を見直しており、インドネシアは中国との経済関係を深めている。

ルトノ外相はポンペオ長官にGSPが両国にとって重要であることを指摘したとし、ナトゥナ諸島のような島しょも含めてインドネシアへの投資を増やすよう米企業に要請したと語った。

長官は両国の経済関係の弱い部分を認識していると述べたが、GSPの延長については言質を与えず「デジタル、エネルギー、インフラなどの分野を中心に米国からの投資をもっと増やすべきだ」と指摘した。

ポンペオ長官は29日にインドネシアのジョコ大統領とも会談した。

ルトノ外相によると、ジョコ大統領はGSPの延長も含め、両国の経済協力を今後発展させたいと強調した。また地域の平和と安定、協力を確立するために東南アジアを理解するよう促したという。

ポンペオ長官はこれまでにインド、スリランカ、モルディブを訪問。29日中にベトナムに向けて出発する。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船」船長の意外すぎる末路
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ


20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中