最新記事

東南アジア

民主化求めるデモ隊に守勢のタイ王制支持派 「国王の意思」力に反転攻勢を狙う

2020年10月28日(水)15時30分

王制支持派の一部の指導者は、暴力を否定している。彼らにとって、王制は政治を超越した存在であり、王制を擁護することは政治的ではない。

だが、自警団組織のリーダーである前出のリャントン氏は、大学構内での小競り合いは普通のことだと位置付け、さらに厳しい行動への支持は高まっていると話す。「王権に対する侵害が拡大するようなら、王制支持派は座視してはいない。暴力をエスカレートさせることにちゅうちょしないだろう」と記者らに語った。

明らかな敵意

反政府抗議デモの参加者は、非暴力的なアプローチを強調しつつも、憂慮している。

抗議の先頭に立つジュタチップ・シリカン氏は「彼らの一部は明らかに我々に敵意を抱いている」と話す。

大学での衝突に介入した警察は、誰に対しても公正に振る舞い、暴力を阻止すると語る。

先週、非常事態宣言を解除した際、プラユット首相は、国会で危機を解決できるよう、事態が沈静化することを願っていると語った。特別国会は26日に開会するが、抗議デモ参加者は国会をほとんど信頼していない。

国会で圧倒的な多数を握っているのは、プラユット派である。昨年の総選挙以前に、軍が上院議員全員を選んでしまっており、総選挙についても野党側はプラユット政権維持のために不正が行われたと主張している。プラユット首相は、選挙は公正だったと述べている。

抗議デモ参加者と野党政治家たちは、プラユット首相が時間稼ぎをしているのではないかと疑っている。「プラユット将軍が、そう簡単に屈服すると想定するわけにはいかない。国王が全面支持をチラつかせている以上、なおさらだ」と語るのは、シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所のタームサク・チャレルムパラヌパップ氏。

王制支持者によるイベント開催は増加しており、1カ月前にはほとんど見られなかったのが、現在ではほぼ毎日集会が開催されている。

これまでのところバンコクでは、反政府抗議デモに数万人が集まるのに対して、王制支持派の集会はせいぜい200─300人規模に留まっている。

だが、バンコク以外では黄シャツの人々が数千人も集まるなど、動員が拡大している兆候がある。ただし、群衆の中には国営企業の従業員が含まれている場合もある。

タイ国民の多くは今後の展開を憂慮している。

国立開発行政研究所が行った世論調査によれば、タイ国民の60%近くが、対立するグループ同士の、あるいは他の当事者による介入に伴う暴力を懸念しているという結果が出ている。


Chayut Setboonsarng and Matthew Tostevin(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・強行退院したトランプが直面する「ウィズ・コロナ選挙戦」の難題
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ



20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請6000件減、労働市場の安定継続

ビジネス

NY外為市場・午前=ドル/円6カ月ぶり安値、関税措

ワールド

トランプ氏、広範な関税措置を「撤回しない」=商務長

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、3月50.8に低下 9カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 2
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のために持ち込んだ?
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 6
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中