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全米で大統領選控え記録的な銃購入ラッシュ 初心者殺到、選挙結果の混乱への「恐怖心」で

2020年10月23日(金)17時23分

ニューヨーク州のニューバーグで、射撃を練習するガーランドさん(2020年 ロイター/Mike Segar)

44歳のシングルマザー、アンドレヤ・ガーランドさんは、ミドルクラス中心の風情ある街・ニューヨーク州フィッシュキルで3人の娘とともに暮らしている。今年5月、彼女は護身用にショットガンを購入し、撃ち方を習うため、地元に新しくできた射撃クラブに加入した。クラブの規模は急速に拡大している。

その後、ピストルの所持許可も申請し、ますます品薄になる弾薬類が入荷しないか常に気を配っている。地元のウォルマートに週3回は通うが「いつも品切れだ」と彼女は言う。

今年、米国の銃器産業は記録的な売上高を達成しているが、それを支えているのは、ガーランドさんのような初めて銃を購入する多数の顧客だ。彼女が銃器購入を決意した理由の一端は、気掛かりなニュースが重なっているためだ。新型コロナウイルスによるパンデミック、警察による黒人殺害をめぐる社会不安、そして多くの人が「選挙」の結果をめぐる紛糾が暴力事件につながることを心配している。

「周囲のあらゆる状況を考えると」とガーランドさんは言う。「銃は必要だと思う」──と。

連邦政府の銃器購入者身元調査データによれば、ここ数十年間、米国で銃器販売が急増するケースは、民主党出身の大統領の誕生や銃乱射事件の頻発など、銃規制強化が近いのではないかという懸念を引き起こすような事件を契機とする予測可能な動きだった。

業界専門家や銃器問題を専門とする研究者によれば、こうした急増を主に担うのは、銃器産業の中心顧客である政治的には保守派の白人男性で、すでに1丁ないし複数の銃器を所有している場合が多かった。

だが、ロイターが10数人の業界専門家、研究者、銃砲店オーナーに取材したところ、今年の市場拡大には、女性やマイノリティ、政治的にはリベラルで、これまでは銃所有など考えたこともなかった人々など、新たに殺到した初回購入者が含まれていたという。

「ふだんなら銃について考えもしない人々が、自分たちの領域以外のことを真剣に考えざるをえなくなっている」と語るのは、イリノイ州シカゴ郊外のデスプレーンズで銃砲店「マクソン・シューターズ・サプライズ・アンド・インドア・レンジ」を営むダン・エルドリッジ氏。

業界アナリスト、業界団体、さらには大手銃器メーカーであるスミス&ウェッソン・ブランズのマーク・ピーター・スミスCEOによれば、今年は初回購入者の数が急増しているという。

スミスCEOは9月3日、投資家とのオンライン会議の中で、今年の売上高の約40%が初めて銃器を購入する顧客になるとの推定値を示した。同氏によれば、これでも控えめな予測で、過去数年の「全国平均の2倍」に相当するという。

スポーツマンズ・ウェアハウス・ホールディングズのジョン・ベイカーCEOは9月2日のオンライン会議で、今年1─7月に銃器産業全体で500万人が初めて銃器を購入したとの試算を示した。この数字は、業界団体の全米射撃協会が小売店を対象とする全米規模の調査に基づいて発表した最近の数値とも整合している。

ウォルマートはロイターへの回答で、ハンティング関連を含むアウトドア用品が品薄であることを認めたが、銃器・弾薬の売上高や在庫状況については詳細を示さなかった。「可能な限り迅速に顧客のために商品を提供できるよう、サプライヤーと協力を進めている」とウォルマートは話している。

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