最新記事

動画配信

ディズニー、ダンボやピーター・パンの人種差別表現を認める 問題を浮き上がらせるネット配信サービス

2020年10月30日(金)21時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

newsweek_20201030_213407.jpg

Disney+で『ダンボ』『ピーター・パン』などを視聴すると冒頭12秒ほど人種差別的な表現があることを示すメッセージが表示される。Disney+の画面より

戦争の影響で日本人差別も

今回の6作品については差別的表現についてのメッセージだけだったが、完全な差別表現に関しては、該当シーンがすでにカット処理された過去作品もある。例えば、有名な作品でいえば、クラシック音楽とアニメの融合が美しい名作『ファンタジア』(1940)では、サンフラワーというキャラクターがアフリカ系アメリカ人を誇張していると抗議され、60年代にサンフラワーの登場シーンがカットされた。

また、短編映画『サンタのオモチャ工房』(1932)では、クリスマスプレゼント用に作られた人形をサンタクロースが確認するシーンで、流れてくる白肌のブロンドの人形が「ママ!」と言うとOKのハンコを押し、次に黒い肌の人形が「ママ!」というと、サンタはそれを見て爆笑。黒い肌の人形は自らOKのハンコを押して立ち去る──という場面があった。この数秒のシーンももちろんカットされている。

今回、差別表現に関する注意メッセージが表示されるようになった『わんわん物語』だが、差別シーンとされているのはアジア人への誇張表現だ。昔から欧米の映画でのアジア人ステレオタイプは、細く吊り上がった目に大きな前歯が特徴で、『わんわん物語』では、2匹のシャムネコがこのように描かれている。

さらに日本人を馬鹿にした表現で有名なのは『ドナルドの襲撃部隊』(1944)である。こちらも同じくアジア人の外見を誇張し、さらに強い英語アクセントと、お辞儀を繰り返す日本人の文化をギャグにしている箇所がある。

これらの作品は、タイトルの横に書き込んだ年号を見て頂ければわかるように40-50年代に制作されたものが多い。特にアジア人や日本人に対しての表現は第二次世界大戦など戦争の影響もあるようだ。

ディズニーランドの人気ライドにも影響が!

近年の修正では、『アラジン』(1992)が記憶に新しい。ある曲の歌詞の一部について米アラブ反差別委員会から抗議を受け、その後DVDやサントラCDで差し替えの処置がとられた。

今回の6作品は、差し替えるほどではないが、現代の人権意識と見合っていないため、誤解を与えてしまうかもしれないという意味でメッセージを加える措置ことになったようだ。このように配信で過去作品が現代に広まることが、過去の問題表現を、世界基準と現代の目線で改めて見直すいい機会となっている。

さらにディズニーは、映像だけでなく現実世界でも過去の作品を改める動きに出ている。今年6月ディズニーは、各国のディズニーワールドや、東京ディズニーランドにもある人気ライド「スプラッシュマウンテン」について、モチーフになった1946年の実写+アニメ『南部の唄』から『プリンセスと魔法のキス』(2009)に変更するよう努めることを発表した。
映画『南部の唄』は、公開後からアフリカ系アメリカ人に抗議され続け、1986年以降公開されていない作品である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中