最新記事

韓国

韓国、政府と医療人の対立にろうあ者団体が「待った!」 コロナ禍のなか炎上「おかげ様としながらチャレンジ」とは?

2020年9月3日(木)21時20分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

韓国政府の医療制度改革に反対する医療人は「おかげ様チャレンジ」に皮肉を込めた「おかげ様としながらチャレンジ」キャンペーンを展開したが…… JTBC News / YouTube

<コロナと戦う医療人への感謝を表すキャンペーンに当の医療人が反旗、それをろうあ者団体が批判。いったい韓国はどうなってるのか──>

今年の春は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化するとともに、休むことなくコロナと闘う医療従事者の人びとへ、感謝の気持ちを伝えるキャンペーンを見かけることが多かった。

ヨーロッパやニューヨークで多く行われた、朝と夕方のベランダからの拍手キャンペーンや、Twitterなどでハッシュタグと共に「ありがとう」のメッセージを送るなど、世界各地で様々な方法がとられてきたが、お隣の国・韓国では、ある感謝のキャンペーンが波紋を呼んでいる。

「おかげ様チャレンジ(덕분에 챌린지)」と呼ばれるこのキャンペーンは、コロナウイルスと闘う医療従事者に感謝の気持ちを表すため、今年4月頃からオンライン上で始まった。韓国の手話で「感謝」の意味を表す手のポーズ(右手は親指を上げる「いいね!」の手で、左手をその下に添える)で写真を撮り、「#おかげ様チャレンジ」「#医療陣のおかげ」などのハッシュタグを付けてSNSに投稿する運動だ。

一般人はもちろん、元フィギアスケート韓国代表選手のキム・ヨナさんや、男性アイドルグループのSHINeeやEXOのメンバー、大人気キャラクターのペンスといった芸能人や著名人も多数参加。4月28日には文在寅大統領とその側近らも一緒に参加し韓国政府のHPに写真が掲載され話題となった。

ところが最近、このチャレンジを逆手に取って、手話の「感謝」の動作を逆さまにした「おかげ様としながらチャレンジ」が医大生を中心とした医療関係者が始めて話題を集めている。

これは、白衣を脱ぎ腕にかけて、左手をブーイングするときのように下に向けて、右手をその手の上に添える動作で写真を撮り、おかげ様チャレンジ同様SNSを中心に写真投稿するキャンペーンである。

アンチおかげ様キャンペーン、その意味は?

7月末、韓国政府は、これまでの医科大学の定員約3000人を、2022年から毎年400名ずつ増員して、10年間で4000人増の年間合格者7000人とする計画を発表した。さらに、地方に医大も新設し、地方医師希望者には卒業後10年間その地方で勤務することを条件に奨学金を出すという。

この新しい政策に対し、全国の医大生と医学専門大学学生協会、また医師たちが一斉に反発し立ち上がった。学生らを中心に「おかげ様としながらチャレンジ」を開始し、現在授業のボイコットも始まっている。

そして、8月上旬にはまだコロナの感染が収まっていない中、医師たちによる24時間集団診療ストライキにまで発展してしまった。さらに8月末にも第2ストライキが決行され、韓国政府は、休診した病院に対し「業務開始命令」を下した。韓国政府によると、第二ストライキが開始された26日には、全国約3500以上の病院が休診したとし、命令を拒否した場合には法的に処罰すると表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中