最新記事

買収合戦

TikTokとの交渉権を得たオラクルのCEOはトランプのお友達、米中対立の命運も握る?

Oracle's Larry Ellison Is One of America's Richest Men and Trump Supporter

2020年9月15日(火)18時30分
ジェイソン・マードック

TikTokは「パートナー」としてオラクルを選択 REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

<TikTokはオラクルを買収相手ではなく提携先としている。米企業の傘下に入らない限りビジネスを禁止する、とするトランプはその提案を受け入れるのか>

中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業をめぐる買収合戦で、有力候補とみられていたマイクロソフトが、TikTokの親会社バイトダンス(北京字節跳動科技)から買収案を拒否され撤退。代わりにソフトウェア大手のオラクルが提携先の最有力候補として浮上した。

TikTokは、顧客の個人情報が中国に流出しかねないという安全保障上の懸念から、ドナルド・トランプ米政権から9月半ばまでに事業を米企業に売却しなければサービスを禁止すると通告を受けており、複数の米テック企業や小売企業が買収に関心を持っていると言われていた。

なぜ、オラクルなのか? 買収に名乗りを上げたとされるほかの企業とオラクルの違いは、トランプ政権との人脈だ。買収交渉においてマイクロソフトが有力候補とされていた8月半ば、トランプは記者団からこの問題について質問を受けると、ライバルであるオラクルと同社のラリー・エリソン共同創業者を称賛した。

「オラクルは素晴らしい企業だし、オーナーも素晴らしい人物だと思う。彼はすごい人物だ。オラクルは確実に、TikTokの事業を引き受けることができると思う。彼らには9月15日まで時間を与えている」とトランプは述べた。

シリコンバレーのもう1人のレジェンド、ラリー・エリソン


テック業界では珍しいトランプ支持者

エリソン(76)は1977年にオラクルを共同創業。2014年9月まで同社の最高経営責任者(CEO)を務め、現在は会長兼最高技術責任者を務めている。フォーブス誌によれば、9月14日時点でエリソンはオラクル株の35.4%を保有し、純資産は740億ドルを超えている。

彼はフォーブス誌の2020年版「アメリカで最も裕福な400人」で5位。世界の富豪上位500人の資産をランキングして日々更新するブルームバーグのビリオネア指数では、9月14日時点で11位だ。

エリソンはまた、テック業界のリーダーの中では珍しいトランプ支持者としても知られている。デザート・サン紙によれば、今年2月にはカリフォルニア州ランチョミラージュに所有する土地で、トランプのための資金集めイベントを開催。支持者たちは、トランプとのゴルフと写真撮影のために10万ドルを支払ってイベントに参加した。

このイベントには大勢のオラクル社員が反対し、イベントの数日後に抗議を行った。ブルームバーグによれば、仕事をボイコットしてボランティアに参加する社員もいた。

政治紙のザ・ヒルはこの資金集めイベントに先立って、トランプ政権がオラクルとグーグルの(プログラミング言語Javaをめぐる)著作権訴訟についてオラクルを支持したと報じた。

<参考記事>中国企業は全て共産党のスパイ? 大人気TikTokの不幸なジレンマ
<参考記事>トランプTikTok禁止令とTikTokの正体

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領と外相搭乗のヘリが山中で不時着、安否不

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 6

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 7

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 8

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中