韓国ネットに新たな闇 犯罪者を晒す「デジタル刑務所」、えん罪で死者も
インターポール経由で運営者を逮捕
このようにデジタル刑務所によるえん罪被害が増えだしたことを受けて、大邱警察庁サイバー捜査隊は、警察庁からの指示で強制捜査に取り掛かった。大邱警察庁は、サイト運営者が海外に滞在していることを突き止め、8月31日警察庁外事捜査課を通じてインターポールに捜査協力を要請した。
そして、9月22日ベトナムのホーチミンで30代の韓国人男性A容疑者を検挙した。A容疑者は、事件被疑者の個人情報と裁判所宣告結果などを、運営中のサイトへ無断で掲示した疑いで検挙された。韓国送還後は、引き続き共犯調査が行われる予定である。
A容疑者の逮捕に引き続き、24日韓国放送通信審議委員会は、会議にて「表現の自由は最大限保護しなければならないが、現行の司法体系の不正・悪用を許容してはいけない」とし、デジタル刑務所サイトに対する接続遮断を決定を発表した。
さらに、「サイトに対する常時モニタリングを続け、海外サーバーサービス提供業者に協力を要請するなど、不法情報の再流通を防ぐために努力する計画だ」と声明を出した。
次々とアドレスを変更しながら生き延びる
ところが、その翌25日には、なんと「デジタル刑務所」のツイッターアカウントが開設され、新たなサイトのアドレスがツイートされている。そこからリンク先に飛ぶと、新たなアドレスに引っ越ししたサイトが表示され、今でも個人情報が誰でも見ることができる。
また「接続遮断された場合の利用方法」などの説明も詳しく掲載されており、今後また遮断要請があったとしても、新しくサイトを作り、ツイッターで新アドレスを告知して情報提供していくと記されている。
デジタル刑務所側は、サイト遮断に屈せず、韓国放送通信審議委員会と真っ向から対立する構えのようだ。
デジタル刑務所がオープンした当初は、運営者が「n番部屋事件」の管理人だったソン・ジョンウ容疑者の身辺情報をインスタグラムに掲載したものだったという。その後、インスタグラムのフォロワー数を伸ばし、6月に「デジタル刑務所」サイトを開設、他の性犯罪者などの公開を始めたそうだ。
性犯罪者への罪が軽いのではないかという意見は、韓国だけでなく日本でもこれまで何度も議論されてきた。このデジタル刑務所の運営者も開始当初は、自分のことを正義の味方と信じて活動を始めたのかもしれない。
自分や家族が性犯罪の被害者だったらと考えると、情報を公開し、社会的に罰せられて欲しいと願う気持ちも分らなくもないが、しかし、現代のネット社会ではデジタルタトゥーという言葉があるように、一度拡散してしまった情報は取り返しのつかないことになってしまう。正しく判断できる能力がない者が、罪を裁くまねごとをするなら、また次のえん罪を引き起こしてしまうのではないだろうか。