最新記事

映画

オスカー像いつかレインボーカラーになる? アカデミー賞が多様性重視へ大改革

2020年9月24日(木)19時42分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

文化的に誤った演出が少なくなる?

スタッフのLGBTQ+指定も深刻だ。本人の心の問題をどう決定するのだろう。ジェンダーの問題はかなりセンシティブな部分である。家族や世間にカミングアウトしている人もいればそうでない人も多いはずだ。線引きすること自体難しい問題となる。

もちろん、スタッフ側にマイノリティーの人々が採用されると、これまであった文化的に間違った演出などが正されるという利点もある。例えば、アジアが舞台のハリウッド映画で、日中韓(またベトナムやタイ)の文化がごちゃ混ぜに紹介されたシーンはよくあることだったが、アジア人スタッフによって少しはましな演出になるかもしれない。また、多様性により特定の人種や障がい者、セクシャルマイノリティーの人たちに対して誤解を招くようなギャグシーンが減ってくれればと期待している。

「パラサイト」PD、アカデミー映画博物館の副議長に

今回はアカデミー作品賞の改正案について紹介したが、アカデミー関連で映画以外にもこんなニュースが報道された。先日、韓国最大の映画制作配給会社CJENTの副会長イ・ミギョン氏が「米国アカデミー映画博物館」取締役会の副議長に選出されたという。

彼女は、今年ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』を米国アカデミー賞4冠に導いた人物であり、授賞式では記念写真に写っていたのでご存じの方もいるだろう。朴槿惠政権下では反体制寄りの文化人としてブラックリストに上がった1人で、そのために2014年韓国から米国に渡り、その後は海外エンターテインメントの場で活躍している。2017年には米国映画芸術科学アカデミー(AMPAS)会員になり、ついに博物館の副議長の一人にも任命された。

ちなみに、この理事会長はネットフリックスの共同CEOであるテッド・サランドス氏が務め、理事陣には、俳優のトム・ハンクス氏やルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディ氏などそうそうたるメンバーが名を連ねている。来年4月(日本時間5月)開館記念にはなんと宮崎駿展が開催されるという。こちらも一体どのような多様性を見せてくれるのか、今から楽しみだ。

本来は、多様性など当たり前のことであり、このような規定でガチガチに縛らなくても、自然にそういった映画が世界中で作られることが理想である。しかし、今現在そうでない場合、最初の一歩として多少無理やりにでも始めてみることが重要だ。

あと数十年もすれば「このような古い規定がまだあったのか。」と皆が驚くほどの多様さを認め合える映画界になっているはずだと信じたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中