最新記事

映画

オスカー像いつかレインボーカラーになる? アカデミー賞が多様性重視へ大改革

2020年9月24日(木)19時42分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

出演者のみならずあらゆる関係者が対象に

一例を挙げると、A,キャスティング項目では、A-1「最低一人は下記の人種を主人公もしくは主要キャラクターとして起用しなければならない」とある。その人種も細かく記入されており「アジア人、ヒスパニック/ラテンアメリカ系、ブラック/アフリカ系アメリカ人、先住民/ネイティブアメリカン/アラスカの先住民、中東系/北アフリカ人、ネイティブハワイン/または他の太平洋島民、その他少数民族/人種または民族」と決められている。簡単にいうと非白人種の起用が必須となる。

また、A-2では「脇役の30%以上は下記のうち2項目を満たしていなければならない」とし、その条件とは「女性、精神もしくは身体のハンディキャップのある人、LGBTQ+の人、ろうあ者もしくは難聴者・認知症者」であること。

さらにB,「監督・作家・撮影監督等スタッフについて」のB-1では、クリエイティブ部門のリーダー的役職には「以下の人がいなければならない」とされている。その条件は「女性、特定人種(非白人の意味)、LGBTQ+、身体もしくは精神的ハンディキャップがある或いはろうあ者か難聴者」であり、これはC-1「アシスタント/インターンシップ」、D-1「配給マーケティング部門」でも同じ条件での記載があり、今後は出演者だけでなく、制作側もマイノリティーの人たちを起用する必要があることが記されている。

この規定によって、非白人人種やハンディキャップのある人々、女性にはハリウッドと言う舞台への窓が大きく開かれた。

規定に合わせるために作品が歪む恐れ

しかし、今後映画の設定を規定に合わせようとするがために、本来の話からちぐはぐな内容になってしまわないか心配する声もある。時代物や特定の地域で当時そこに住んでいなかった人種を無理やり登場させて、それが素晴らしい映画と言えるのだろうか?

また、秀でた演技にまるでキャラクター生き写しのような女優と出会い、キャスティングしようとしても、その女優が非白人でなかったために諦めなくてはいけない場合「ごめんなさい、あなたは素晴らしいけれど、あなたの肌の色は採用できないの」と彼女に伝えるのだろうか?

さらに、白人と特定人種の両親を持つ俳優やスタッフ希望者がいた場合、その人種は見た目で決められてしまうのだろうか? それはまた逆差別を意味するのではないか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃を警告・ハマスに武装解除要求

ビジネス

米国株式市場=下落、ハイテク株に売り エヌビディア

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで上昇、介入警戒続く 日銀

ワールド

トランプ氏「怒り」、ウ軍がプーチン氏公邸攻撃試みと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中