効果上がるアメリカのリモート診療 コロナ禍による規制緩和が活用後押し
警戒すべき事例も
遠隔医療テクノロジーの利用が増加するにつれて、患者の安全性を重視する人々は、病院に対して安易な近道を選ばないよう警告している。訓練を積んだプロがベッドサイドにいれば命を脅かす合併症に対して素早く対応できるが、その代役はカメラやコンピューターには演じられないというのが彼らの主張だ。
患者の安全性を監視するNPOであるリープフロッグ・グループは、救命医療の資格を持つ医師が毎日ICU患者を1人1人直接チェックしてから、遠隔医療のスタッフに監視を委ねることを勧告している。同グループは、遠隔診療の医師が現場のスタッフからの要請に5分以内に対応し、患者の状態を評価できないようであれば、担当する患者数を減らすべきだと述べている。
ロサンジェルスの映像作家スティーブ・バロウズ氏は、遠隔医療にまだ懐疑的だ。
同氏の母親は、ウィスコンシン州の病院で、2009年に受けた腰の手術の際に複数の合併症を起こし、手術室とICUにおいて恒久的な脳損傷を負ったという。
バロウズ氏によれば、この件の訴訟を通じて、1人の医師が150人以上のICU患者をリモートで監視していたこと、そして母親の血圧が低下したときに対応できる医師がICUにいなかったことを知った。バロウズ氏は2018年、母親の事件をテーマに『ブリード・アウト(出血)』と題するドキュメンタリーを米国のケーブルテレビ局HBOで発表した。
「適切に利用されれば、遠隔医療は素晴らしい」とバロウズ氏はあるインタビューで語っている。「だが、ベッドサイドの医師をテクノロジーで置き換えるというのは正気の沙汰ではない」
裁判で、陪審員らは病院側に過失はないと判断した。合併を経て病院の現オーナーとなっているアドボケート・オーロラ・ヘルスでは、「(電子ICUは)ベッドサイドの医療従事者を代替するものではない。むしろ、さらに多層的な安全のために新たに追加される『目』として機能している」と述べている。
「つきっきりの看病」
カムデンの遠隔医療を担っているセントルイスの企業アドバンストICUケアは、26州90カ所以上の病院と提携しており、合計1300人以上のCOVID-19患者に対応してきた。
同社の最高医療責任者ラム・スリニバサン医師は、「これらの患者には、つきっきりの看病と継続的な調整が必要だ。これこそ私たちがやっていることの大部分だ」と言う。
サウスカロライナ州の感染者数は9月11日の時点で12万6000人以上、確認された死者は2877人を数え、相変わらず新型コロナウイルスの「ホットスポット」となっている。
同州内におけるCOVID-19患者は、3月上旬の同じ日に2人の感染が発表されたのが最初だが、その1人はカムデンだった。歩道で馬に乗ることを禁止する掲示があるような、のどかな地域である。