最新記事

東アジア

尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮想「東シナ海戦争」の結末

SLAUGHTER IN THE EAST CHINA SEA

2020年9月23日(水)20時15分
マイケル・ペック(防衛ライター)

ジェット戦闘機を搭載した中国初の空母「遼寧」(17年7月) Bobby Yip-REUTERS

<米シンクタンクの机上演習が示す日米共闘のシナリオと米中対立の血みどろの惨劇>

2030年。東シナ海にある日本の島を、中国軍部隊が占領した。日本は両用戦タスクフォースを派遣し、直ちに到着した米軍の軍艦や航空機が同行する。

日本を支援せよ。ただし、中国軍部隊との戦闘は回避せよ──それが米軍側の指令だった。

そのもくろみはたちまち崩れる。ワシントンのシンクタンク、新アメリカ安全保障センター(CNAS)が実施した机上演習によると、米軍が介入すれば、中国軍部隊との交戦を避けることは不可能だ。

「危険なゲーム──2030年、東シナ海危機」と題した演習が実施されたのは今年7月22日。このシミュレーションには、一風変わった工夫が盛り込まれていた。テレビ会議アプリ、ズーム(Zoom)を使って、CNASが提示する選択肢の中から、中国と日米それぞれの戦略を一般参加者に多数決で選んでもらったのだ。

アメリカやカナダから集まった一般参加者約400人の選択の「結果は重大だ」と、CNASのスザナ・ブルーム防衛計画担当責任者は言う。「どちらであれ、この対立の勝者が今後10年間のアジア太平洋地域の行方を決める可能性がある」

サイバー攻撃から航空戦へ

演習のシナリオは、トム・クランシーの軍事スリラー小説さながらだ。30年、東シナ海の尖閣諸島の魚釣島に中国軍兵士50人が上陸。中国政府は周囲約80キロ範囲内を自国の排他的経済水域(EEZ)に設定すると宣言し、本土の弾道ミサイルの傘の下、水上艦や潜水艦、戦闘機、ドローン(無人機)の一団を配置する。

日本の「防衛軍」(中国から見れば「侵略軍」)を構成するのは、沖縄に配備された航空機の援護を受ける強襲揚陸艦、護衛艦、潜水艦、特殊部隊や海兵隊だ。そばには米軍の空母打撃群2つ、および潜水艦やステルス戦闘機、爆撃機が控えている。

演習開始当初の交戦規定は息苦しいくらいに厳密だ。日本を支援する一方で、中国軍部隊との戦闘は避けるのがアメリカ側のルール。中国軍司令官らは、日本の部隊がEEZに入った場合は米軍に着弾させずに攻撃せよ、との指令を受けている。

両チームが用心深く動くなか、戦場マップの上では一連の応酬が展開された。レッドチーム(中国)もブルーチーム(日米)も主張を譲らず、レッドが「引き下がれ」と強硬なメッセージを発信する一方、ブルーは敵を撤退に追い込もうとする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アフリカなどの途上国、中期デフォルトリスクが上昇=

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 期末配

ビジネス

大和証Gの10-12月期、純利益は63.9%増の4

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中