どれだけ長生きできるかはお金で決まる? 東京、大阪エリア別の「いのちの格差」
どれだけ長生きできるかは地域の風習や文化にも左右される RelaxFoto.de/iStock.
<経済力だけではなく、健康への意識や学歴も寿命に関連していると考えられる>
日本は世界有数の長寿国だが、寿命には地域差がある。2016年の都道府県別の健康寿命を見ると、最長と最短の県の開きは男性で2.0年、女性で2.7年となっている。
男女とも首位の山梨県では、高齢者の孤立を防ぐ「無尽」という地域ネットワークがあるという(「健康寿命、なぜ地域に差?」朝日新聞、2018年3月9日)。男性3位、女性2位の静岡県では、緑茶を飲む習慣があるためではないかと言われている(同上)。どれほど長生きできるかは、地域の風習や文化による面がある。
都道府県よりも下った市区町村レベルで見ると、社会経済背景の影響も見えてくる。市区町村単位では、寝たきりの期間も含めた平均寿命のデータしかないが、男性の平均寿命の首位は横浜市青葉区の83.3歳だ(厚労省『市区町村生命表』2015年)。この結果について、横浜市長は「区民の健康意識の高さによるのではないか」と述べている。
地域差の要因は?
あたりさわりのない見解だが、原資料に載っている上位と下位のエリアの顔ぶれを見ると、一定の傾向性があるように思える。都内23区で見ると、男性の平均寿命には82.8歳から79.4歳までの幅があるが、3つの階級で各区を塗り分けると<図1>のようになる。
西高東低の模様で、単なる偶然とは思えない。「長命の山の手と短命の下町」という言葉で言い表すこともできる。
こうした分化(segregation)がなぜ起きているか。都内23区の世帯年収の中央値を出すと、最高の606万円から最低の370万円までの開きがある(総務省『住宅土地統計』2018年)。この指標を男性の平均寿命<図1>と関連付けると、相関係数は+0.509となる。年収が高い区ほど寿命が長い、という傾向だ。よい医療を受けられるかどうかは経済力に左右される、という現実もある。