最新記事

韓国

関係悪化の責任は安倍前首相にあると煽ってきた韓国、菅首相誕生への反応は

2020年9月21日(月)16時00分
佐々木和義

安倍路線を継承する菅前官房長官が浮上すると、関係改善は難しいという見方が広がっていた...... Yoshikazu Tsuno/Pool via REUTERS

<菅義偉新首相が誕生し、韓国の新聞各紙は韓国と日本の関係改善を期待する社説を掲載している......>

安倍前首相が辞任を発表した8月28日以降、韓国政府やメディアは日本の政権交代が日韓関係の改善に繋がると期待してポスト安倍に注目したが、安倍路線を継承する菅義偉前官房長官が浮上すると、改善は難しいという見方が広がった。菅義偉新首相が誕生し、韓国の新聞各紙は韓国と日本の関係改善を求める社説を掲載している。

菅前官房長官の首相就任が確定した9月15日、中央日報は、日韓関係の改善は難しいが、互いに開かれた姿勢で協力できることは協力し、積極的な対話で解決していくべきだと述べ、日本の新首相の就任は行き詰まった現状を打開する糸口になり得ると、関係改善を期待する社説を出した。

東亜日報は「菅新首相、安倍氏の陰から抜け出し韓日関係に新たな地平開け」という見出しで、菅新首相が韓日関係に新しい地平を開くよう望む。韓国政府は、最悪な韓日関係から抜け出す道を模索しなければならないという社説を掲載した。

一方、ソウル新聞は、新首相が韓日関係で安倍政権と同様の強硬路線を踏めば日本の孤立を招くだろう。未来指向的な関係構築を望むなら、菅時代の日本は変わらなければならないと論評した。

関係悪化の責任は、安倍前首相にあると国民を煽ってきた

韓国の政府やメディアは、日韓関係が1965年の国交回復以来、最悪となった原因が安倍晋三前首相にあると主張し、国民を煽ってきた。

昨年7月から日本製品の不買運動が広がり、観光業や航空業、日本製品を販売する韓国企業や日系企業で働く韓国人の被害が伝わると、韓国世論は「NO JAPAN運動」を「NO ABE運動」に切り替えた。

大統領制を採用する韓国は、大統領がすべてを決定する。憲法上は行政権と軍事権の長だが、事実上は立法権と司法権を含む四権の長として権限を握り、閣僚や官僚、さらに多くの国民が大統領に従うが、大統領が変わると人事はもとより政策も大幅に転換する。対日外交が180度転換することは珍しいことではない。

安倍晋三首相が辞任の意向を表明したとき、聯合ニュースが「『韓国叩き』主導の安倍首相が辞任へ 韓日関係好転なるか」という見出し記事を掲載し、韓国の与野党は日韓関係の改善を期待した。

一方、議院内閣制を採用する日本は、首相が替わっても政策が大きく変わることはない。国民世論も同様だ。韓国の大統領府や与野党、マスコミが日韓関係の改善に期待を寄せる中、外交部は、公式には日本の新首相や新内閣と関係改善に向けた協力を続けると発表したが、メディアのインタビューに対し、日韓関係に変化があるとは見ていないと話している。

与党・共に民主党の崔芝銀(チェ・ジウン)国際報道官は、韓国と日本の交易と経済のため、両国の対話と疎通が持続的に行われなければならないとし、日本政府のより前向きで責任ある姿勢を期待すると論評した。

保守系最大野党・未来統合党の金恩慧(キム・ウネ)報道官も、新首相が韓日関係により前向きな視線で臨む閣僚であることを願うとコメントしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中