菅政権、携帯料金・デジタル化・縦割行政など「聖域なき改革」でカギ握る調整力 問われる剛腕の振るい方
菅氏とともに1996年の衆院選で初当選を果たし、今回の自民党役員人事で選挙対策委員長に就任した山口泰明議員(自民)は「総務相時代に『ふるさと納税』をやったり、携帯料金を下げさせたりと、昔から菅さんはドラスチックにやる人」と評価する。
新政権が推進する規制改革を巡って山口氏は「菅さんは責任感が強い。好きな言葉は『意志あれば道あり』で、(規制改革に伴う)ハレーションが起きる部分はあるだろうが、上手くまとめていくのでは」と言う。
後に引かない突破力、強権の副作用も
2008年から始まった「ふるさと納税」は、第1次安倍内閣時に総務相だった菅氏が主導した。
元総務官僚の平嶋彰英(あきひで)立教大特任教授は「(第2次安倍政権時に菅氏が)ふるさと納税の枠を2倍に広げ、納税の行政手続きをワンストップでやれと言い出した」という、14年の自治税務局長時の経緯を明かす。
「高所得者が節税策として返礼品を使っていたので(高所得者の)節税枠を広げるような改正はまずいと菅官房長官に問題提起した。返礼品の送付自体に法令上の規制を導入することや、枠に制限を掛ける案も持って行ったが、そもそも理解しようとしてくれなかった」と振り返る。
総務事務次官の有力候補とも目されていた平嶋氏は、15年7月の幹部人事で自治大学に異動となった。「強烈ですよ。菅さんは一度言い出したら後には引かない。人事でもそう。恐怖政治というか、強権政治」と、平嶋氏は当時を振り返る。
こうした面もある菅首相の人物像について「人事権を行使して官僚をコントロールする、政治家としての機能をフル活用するのに長けた人」と、政治評論家の伊藤惇夫氏は指摘する。
同氏は菅首相の今後の政治戦略として、早期の衆院解散・総選挙が取りざたされる中で「国民の懐にプラスになる政策をメインに、生活に密着した政策を打ち出してくる可能性がある」とみる。
ただ、携帯料金に限れば、民間各社の収益を圧迫することで次世代通信5Gやその後のインフラ整備に対する先行投資に遅れが生じる矛盾も招きかねない。
「携帯料金の引き下げを求めるために、電波使用料を上げるという脅しがうまくいけばいいが、時として副作用も出ることがあり得る。批判が高まれば、内閣の支持率にも響く」と指摘する。
(梶本哲史、木原麗花、取材協力:中川泉、日本語記事執筆:山口貴也 編集:石田仁志)
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