中国とのライバル関係を深刻に扱うべきでない理由
STAY CALM ABOUT CHINA
東西冷戦の主な舞台はヨーロッパであり、政治・社会・経済における西側の明らかな優位が、最終的にソ連を内側から崩壊させた。だが、このときのアメリカの同盟国は、共産主義の独裁体制を拒否した自由民主主義国だった。
現代の米中関係は違う。アジアでアメリカが手を組まなければならない国には、ナレンドラ・モディ首相がヒンドゥー至上主義を掲げるインドや、共産主義国ベトナム、そしてポピュリストのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が権威主義体制を敷くフィリピンなどだ。いずれも民主主義を防衛する戦いで頼りになりそうにない。
なにより危険なのは、中国との競争を互いのイデオロギーの生き残りを懸けた生存競争と位置付けることだ。それはアメリカの戦略をゆがめるだけでなく、競争を著しく危険なものにするだろう。「敵対する国が、相手の国の性質そのものを脅威と見なすと、死闘が繰り広げられることになる」と、政治学者のスティーブン・ウォルトは指摘している。
中国との競争は、東西冷戦のときのように、一方の体制を倒せば勝てるものではない。この競争の最も重要な側面は、経済成長と社会の安定、そして新しい危機への対応能力において、2種類の資本主義体制がどちらも比較的成功しているということだ。だから中国は、アメリカにとってソ連よりも手ごわい挑戦者なのだ。これらの領域で中国と競争するために必要なのは、戦艦を増やすことでも、CIAの工作員を増やすことでも、対外放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の予算を増やすことでもない。必要なのは、長く先送りにされてきた国内改革の実施だ。
<2020年9月22日号「誤解だらけの米中新冷戦」特集より>
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