コロナ禍による将来展望の悪化が、若者のメンタルを蝕んでいる
大学生の4割以上にうつ病の可能性があるという驚愕のデータも出ている baona/iStock.
<経済状況の悪化が深刻になるなかで、夏以降20代以下の若年層の自殺が増加傾向にある>
今年8月の日本全国の自殺者数は1849人で、前年同月よりも246人増加した。コロナ渦による経済状況の悪化に伴い自殺の増加は懸念されていたが、2~6月は前年を下回っていた。だが7月は前年を上回り、8月は250人近く増える事態になっている。
コロナの影響が長期化するなか、貯蓄が底をついた、孤独に耐えられなくなったなど、国民の自助も限界に達しつつある。なお8月の自殺者の増加分246人のうち、186人(75.6%)は女性だ。女性は非正規雇用が多いので、失職して生活苦に陥っているためかもしれない。女性は男性にもまして、コロナの打撃を被っていることがうかがわれる。
年齢別の違いはどうか。8月の年齢層別の自殺者数はまだ公開されていないので、7月の数値を前年と比べてみる<表1>。
自殺者はどの年齢層でも増えているが、10代と20代で増加率が大きい。10代は1.25倍、20代は1.19倍の増だ。若年層の自殺者は少ないものの、昨年の同月と比較した増加率は高い。コロナ渦は、子どもや若者の「生」に影を落としている。
秋田大学の調査によると、学生のほぼ1割に中等度以上のうつ症状がみられたという。医療ベンチャーの「ジャパンイノベーション」の調査では、大学生の44%にうつ病の可能性ありという驚愕のデータが示されている。キャンパスで友人と会えず、自宅で悶々とオンライン授業を受ける日々が続くなか、学生のメンタルは蝕まれている。
就職はどうなるのか、入社した会社はこれから先大丈夫か、という不安に苛まれている若者も多いはずだ。経済的な見通しが悪化するなか、アメリカでは親と同居する若者の比率が52%と、大恐慌時代を上回る最高水準に達している(ピュー研究所)。若者の将来展望が悪くなっているのは、日本も同じだ。