極右、反ワクチン、家族連れが入り乱れる奇妙なドイツのコロナ対策抗議デモ
コロナ対策としての活動制限に抗議する人々が国会議事堂前で警察官と乱闘騒ぎに REUTERS/Christian Mang
<8月にベルリンで行われた2つの大規模デモでは、これら極右・右翼の人々と、お年寄りや家族連れなどが一緒になって行進するというやや不思議な光景が展開された...... >
9月3日、ドイツのベルテルスマン財団により発表された調査結果によると、ドイツ政治におけるポピュリズム支持者は2018年に有権者の33%でピークに達したあと、現在は20%まで減少したという。極右政党のAfDなども年々その勢いを失っているが、支持者を失ったことで、さらに過激化することも懸念されている。
暴力の象徴に政治家たちが激怒
8月最後の土曜日、新型コロナ対策への抗議デモがふたたびベルリンで行われた。ドイツをはじめヨーロッパでは感染が急増しており、安全のためこの週末のデモは事前に禁止されていたにもかかわらず、約4万人もが集まった。参加者のほとんどがマスクをつけず、身体距離も確保しなかった。
大部分は平和的な行進だったが、極右過激派が国会議事堂に乱入しようと警察の防御ラインを突破、またロシア大使館前でも右翼過激派と警察との衝突があり、7人の警察官が負傷、200人の逮捕者が出た(ベルリン全体での逮捕者は
約300人)。
この際、右翼過激派たちは黒、白、赤のドイツ帝国(カイザーライヒ)の旗を掲げていた。これはナチスの第三帝国でも一時使用され、現在では禁止となっている鉤十字の旗の代わりに極右が好んで使用するものだ。
これらの暴動に政治家たちが激怒。メルケル首相のスポークスマンは国会議事堂における反民主主義の旗を「恥ずべき光景」と糾弾した。また月曜にはシュタインマイアー大統領が「土曜日の暴力的な暴動は極右思想が私たちの社会に深く根づいていることをまたもや浮き彫りにした」と述べ、極右を絶対に許さないよう、ドイツ国民に呼びかけた。
今回の光景は、1933年、ヒトラーが首相となった4週間後に起きた国会議事堂放火事件を彷彿とさせるとして、政治家たちがとくに敏感に反応したようだ。
いったいどういう集まりなのか
8月にベルリンで行われた2つの大規模デモでは、これら極右・右翼の人々と、お年寄りや家族連れなどが一緒になって行進するというやや不思議な光景が展開された。ベルリンを拠点とする政治・文化誌キケロも、「抗議というよりはフェスティバル」のようであり、「今まで見た中でもっとも奇妙なデモ」と述べている。