カナダが脱北者の難民申請に冷淡になったのはなぜ?
After Canada Denies Asylum, Kim John Il’s Former Bodyguard Fears He’ll Be Killed
李はソウルに移ってからも2004年と2007年の2度誘拐されそうになったというが、警察に被害を届け出たのは2014年で、韓国の法律で5年の時効が過ぎた後だったため、事件は捜査されなかったと話している。
移民難民委員会が疑問視したのは、李がすぐに警察に知らせなかった点だ。「誘拐されそうになり、命の危険があると感じたとすれば、事件後何年も警察に届けなかったのはおかしい」と、ロイドはスター紙に語った。
こうした状況から、李が「韓国で迫害されるか、拷問や命の危険、あるいは残酷な仕打ちや異常な扱い、罰を受ける危険」にさらされるような「重大なリスク」はないと、委員会は判断したと、ロイドは説明した。
人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア支部副部長、フィル・ロバートソンは本誌宛のメールで、「李英國は北朝鮮の政治犯収容所で生死に関わる状況を生き延びた。カナダ政府はどういうわけかその証言の信憑性を疑っている。これには驚くほかない」と述べた。
北朝鮮に引き渡されることも
「韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、北朝鮮指導部の態度に振り回されつつも、何とか南北和解を達成しようと躍起になっており、そのために自国にいる脱北者への締め付けを強化している」と、ロバートソンは指摘する。
「韓国に送還されたら、どんな扱いを受けるか分からないと、李が不安に思うのは当然だ。とりわけ危惧されるのは、金正恩が李の身柄引き渡しを要求することだ。いかなる状況下でも李の身柄を北朝鮮に引き渡すことはないと文書で確約されない限り、どこの国に対しても、カナダは李の送還を検討すべきではない」
報道によるとここ数年、カナダは脱北者の難民認定に厳しくなり、いったん難民として受け入れた後も国外追放にする例が増えている。実際は韓国に定着し安全に暮らしていたことが明らかになったり、すでに韓国籍を取得しながらそのことを隠して難民申請をする場合もあったからだという。李の場合もそのような疑いがあった可能性もある。
本誌はカナダの移民難民委員会にこの件についてコメントを求めたが、現時点では回答はない。
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