最新記事

イギリス

コロナ対策、EU離脱......ジョンソン政権の命運を決する「Dデー」

Boris Johnson’s D-Day

2020年9月18日(金)17時30分
アレックス・ハドソン

ジョンソンは第2次大戦時のチャーチル首相に触発されていると言われる JESSICA TAYLOR-U.K. PARLIAMENT-REUTERS

<チャーチルに憧れるジョンソン英首相に、長期政権か短命政権かを分ける運命の「11月1日」が近づいている>

ボリス・ジョンソン英首相は、第2次大戦期に首相を務めたウィンストン・チャーチルへの憧れを抱いてきた。身ぶりや体格もよく似ているし、チャーチルの伝記を執筆したこともある。

歴史学者のアンドルー・ロバーツによれば、ジョンソンは新型コロナウイルスへの対応でも、「1940年のチャーチルの精神」に触発されているという。

ジョンソンをどこまでチャーチルと重ね合わせて見るべきかはともかく、現在の保守党政権がチャーチル政権と同様の課題に直面していることは間違いない。英経済を立て直して、「ニュー・ノーマル(新しい常識)」を定着させなくてはならないのだ。

コロナ対応をめぐる議論では、戦争にまつわる用語がしばしば用いられる。ここでも戦争の比喩で表現すれば、今のイギリスには、第2次大戦のノルマンディー上陸作戦開始日「Dデー」に匹敵する重要な節目の日が近づいている。イギリスの未来を左右する運命の日、それは11月1日だ。

11月1日は、コロナ禍のなかで社員の雇用を維持した企業への補助金制度が終了する翌日。そして、イギリスのEU離脱をめぐる交渉に関して、EU側が設定している交渉期限が切れる翌日でもある。

大きな崖がそこにある

その頃、寒い季節になり、インフルエンザの流行に加えて、新型コロナウイルス感染者数が再び増加し始めると予想されている。11月1日は、クリスマス商戦が始まる日でもある。過去の例に従えば、その前の週には、政府が来年度予算案を発表する予定だ。

では、この日、何が起きるのか。現時点で確実に言えることはあるのか。

「10月末のイギリスには、さまざまな面で大きな崖が待ち受けている」と、進歩派の有力シンクタンク「公共政策研究所(IPPR)」のシニアエコノミスト、カーステン・ユングは本誌に述べている。

「この秋、英経済の動向がどうなるかが全く見通せない。当初、コロナ後の経済はV字回復を果たすと期待されていた。けれども、実際には景気回復の足取りはもっと遅いように見える。政府の支援が打ち切られるまでに、経済は十分に回復するだろうか」

英政府がコロナ対策で導入した雇用維持補助金制度は、幅広い政治的立場の人たちから歓迎されたが、莫大なコストがかかる。現在の制度を続けるには、1カ月当たり140億ポンドもの支出が伴う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国連の食糧・難民支援機関、資金不足で大幅人員削減へ

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き

ビジネス

トランプ氏「習主席から電話」、関税で米中協議中と米

ワールド

ウクライナ和平案、米と欧州に溝 領土や「安全の保証
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中