中国・ロシアのスピード開発コロナワクチンは「普通の風邪」ベース 効果は7割未満との指摘も
中国とロシアでそれぞれ開発されて世界に広く知られるようになった新型コロナウイルスのワクチンには1つの共通項が存在する。写真はワクチンのイメージ画像。4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)
中国とロシアでそれぞれ開発されて世界に広く知られるようになった新型コロナウイルスのワクチンには1つの共通項が存在する。不十分な効果しか得られない可能性だ。どちらの国のワクチンも、ごく普通の風邪のウイルスをベースに作成されている。多くの人が感染した可能性のあるワクチンだ。これが効果を限定的にしてしまう恐れがあると専門家は指摘する。
効果は7割に届かない、との指摘も
中国人民解放軍のみに使用が承認されたカンシノ・バイオロジクス(康希諾生物股分公司)のワクチンは、ヒトアデノウイルス5型(Ad5)の遺伝子組み換え操作によるものだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルは先週、同社が大規模臨床試験を完了する前に、幾つかの国と緊急使用許可を得るための話し合いを行っていると伝えた。
ロシア政府が8月、ごく限られた試験だけで承認したガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターのワクチンは、Ad5と、もう1つの、よりマイナーなアデノウイルスに由来する。
米ジョンズ・ホプキンス大学のワクチン研究者アナ・ダービン氏は「Ad5はすでに多くの人が免疫を持っているという単純な理由で、効果が気掛かりだ。中国やロシアの戦略がよく分からない。効果の程度は多分70%に届かないだろうし、40%かもしれない」と語り、何か別のワクチンが登場するまで何もないよりはまし、という理屈だろうかと首をかしげる。
ガマレヤ研究センターは、2種類のアデノウイルス由来というワクチン手法によって、Ad5の免疫を巡る問題は解決されるとの立場だ。
カンシノとガマレヤ研究センターはいずれもコメント要請に応じなかった。双方の研究者は、エボラ出血熱に対してAd5由来のワクチンを開発した経験を持つ。
標的のウイルス誤る懸念も
過去数十年を振り返ると、さまざまな感染症向けにAd5由来のワクチン投与実験が試みられてきた。ただ幅広く使われたケースはない。ワクチンは、遺伝子組み換え操作で無害化したAd5ウイルスが「ベクター(運搬者)」となって、標的のウイルス、つまり今回は新型コロナウイルスが持つ遺伝子を体内細胞に運び込んでしまい、実際の新型コロナウイルスが攻撃してきたとき、免疫反応を起こさせるという仕組みだ。
ところが多くの人は既にAd5への抗体を持っているので、免疫システムは標的のウイルスではなく、このベクターを攻撃してしまい、肝心の効果を弱めかねない。