最新記事

米景気

失業者2600万人そっちのけの米景気回復はエネルギー不足

New Jobless Claims Rise in Indiana, Michigan, 26 Million Receiving Benefits

2020年9月29日(火)16時45分
ベンジャミン・フィアナウ

失業保険申請のために並ぶ人々の行列するアメリカ人(6月18日、ケンタッキー州フランクフォート) Bryan Woolston-REUTERS

<雇用回復には追加の景気刺激策が必要だが、大統領選前は望み薄だ。9月からは新型コロナ拡大後半年が過ぎて失業保険受給資格を失うアメリカ人も急増する>

9月24日に米労働省が発表したアメリカの新規失業保険申請件数は、市場予想に反して前週よりも増加した。景気刺激策をめぐる与党・共和党と野党・民主党の協議が難航し、失業保険の受給者が2600万人を超えている現状について、アナリストたちは米経済が「雇用な回復」状態にあり、いずれガス欠になると指摘している。

エコノミスト、民主党や連邦準備制度理事会(FRB)議長らは議会に対して、現在失業保険の給付を受けている2604万4952人の米市民を支援するための、包括的な景気刺激策を導入するよう促している。24日に発表された新規失業保険申請件数は、これまでの減少傾向から再び増加に転じ、13~19日の1週間の新規申請者は87万人にのぼった(前週比4000件増)。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生する前の、1年前の同期の申請件数はわずか21万5000件だった。

失業者の高止まりは危機のサイン

だが小規模企業や失業者を支援するための追加刺激策の見通しは立っていない。下院民主党は24日、個人を対象とした直接支援や、連邦政府からの失業給付の増額などを盛り込んだ2.4兆ドル規模の景気刺激策を発表したが、与党・共和党やホワイトハウスがこの案を受け入れるかどうかは不明。

MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の主任エコノミスト、クリス・ルプキーは24日、ロイターに対して「失業者数が高止まりしている事実は、アメリカがまだ危機を脱しておらず、政府高官たちがFRB幹部による追加刺激策の要請を聞き入れなければ、今後も危機が続くことを示している」と語った。「米経済はエネルギー不足のまま走り続けている状態だ」

労働省の24日の発表によれば、13~19日の1週間の新規失業保険申請件数は87万件と、前週の86万6000件からやや増加。これに対しアナリストたちの事前予想は84万件だった。

米経済はこれまでに、パンデミックの影響で失われた2200万件の雇用の約半分しか取り戻せていない。9月5日からの1週間に各種プログラムを通じて失業保険を受給した人(新たに申請した人と継続受給している人の合計)は、2604万4952人と、その前の週から372万3513人減った。2019年の同時期に失業保険を受給していた人の数は148万8601人だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、iPhone16販売禁止解除で合意間

ビジネス

グーグル、「クロード」のアンソロピックに10億ドル

ビジネス

ECB利下げ支持、今後2会合で─蘭中銀総裁=ブルー

ビジネス

英財政赤字、12月は市場予想以上に膨らむ 利払い費
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 8
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 9
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中