最新記事

東南アジア

タイ政府、大学当局通じて学生の王室改革要求抑え込みへ 19日の反政府集会を前に

2020年9月14日(月)10時40分

タイ政府の意向を受けた各県知事が大学当局を通じて、学生に王室改革の要求を取り下げさせることを目指している。写真は5日、バンコクの教育省前で行われた反政府デモ(2020年 ロイター/Soe Zeya Tun)

タイ政府の意向を受けた各県知事が大学当局を通じて、学生に王室改革の要求を取り下げさせることを目指している。サムチャイ・サワングカルン上院議員が13日、ロイターに語った。

同国では7月半ば以降、軍を後ろ盾とするプラユット首相の退陣と、新憲法制定、総選挙を求める抗議行動がほぼ連日行われている。特に学生グループは10項目の王室改革要求を掲げ、タイでタブー視されてきた王室批判にまで踏み込んだ。

こうした中でサムチャイ・サワングカルン氏はロイターに、19日にバンコクをはじめ各地で予定される反政府集会を前に、県知事が大学トップを会談のために招集したと明かした。タイの上院議員は、軍が設置した国家平和秩序評議会によって任命されている。

同氏は「大学運営側はこの問題を学生に理解させ、王室に関する要求をやめさせるべきだ。われわれは知事に反政府集会の阻止を命じていないが、特に王室に向けられた改革要求の面で、(政府の意図を)大学当局によく分からせてほしいと伝えた」と説明した。

タイ内務省のある高官は、大学宛てにそうした通達が送られたことを認めた。王室はコメント要請に応じていない。

一方、最初に王室改革を打ち出した学生指導者は政府の姿勢について、追い詰められた末の「自暴自棄の作戦」で人々を弾圧し、威嚇しようとしていると批判した。

ロイターが入手したある大学宛ての通達には「抗議行動に参加している一部グループの振る舞いは不適切ではないかと懸念される。例えば王室の転覆を図ったり、不敬罪を定める刑法112条の廃止を求める連中だ」と記されている。

ある反政府集会に参加した学生は、自身が所属する大学に対して政府が「トラブルメーカー」になりそうな人物のリストを作成するよう要請したと話した。

タマサート大学講師のAnusorn Unno氏は、政府が大学側にこのような通達を出すのは珍しいことではないと述べ、今回はたまたまその事実が分かっただけだとの見方を示した。同氏は、学生たちの表現の自由を支持する100人以上の学会関係者による共同署名に加わっている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・パンデミック後には大規模な騒乱が起こる
・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中