11月の米大統領選前にコロナワクチン実用化? ゼロではない可能性
臨床試験のデータをあらかじめ決められた幾つかの段階で審査するのが、外部専門家でつくる効果安全性評価委員会(DSMB)だ。圧倒的に有効である、あるいは逆に全く見込みがないと判定された場合、その試験を途中でやめることを勧告できる。
ファイザーは、被験者32人が感染した段階でDSMBによる最初の審査を受ける予定。もっともロイターが取材した何人かの専門家は、限定的な人数では、本格的な規模の試験で判明するはずの重大な安全性の問題を見落としかねないと警鐘を鳴らした。
ファイザーはDSMBに対して、最初の審査の後、さらに4回の中間的な検証を求めている。広報担当者は「10月までに最初の分析結果を共有できるだけのデータが確保できるのではないか」と述べた。
モデルナは先月、被験者53人が感染した時点でDSMBの最初の審査を受けると投資家に説明した。
これに対してFDAの複数のワクチン諮問委員会メンバーになっているメイヨ・クリニックのグレゴリー・ポーランド博士は、53人の感染に基づく判断では「絶対数が不足している。安全性に関してほとんど知見が得られない」と懸念する。
圧倒的な有効さを理由に試験を打ち切るには、ワクチンの有効性が50%を超えることが必須となる公算が大きい。
ファイザーは、試験打ち切りのための具体的な基準を公表していない。同社のワクチン臨床研究開発部門シニアバイスプレジデント(訂正)のウィリアム・グラバー氏は「この基準が、有効性が非常に高いことの証明になるだろう」とだけ述べた。
拙速のリスク
ファイザー、ワクチン両社ともに7月28日にそれぞれ3万人規模の臨床試験を開始したが、2種類のワクチン接種の2回目の時期が1週間早いファイザーの方が、モデルナよりも先に結果を入手できる態勢にある。モデルナは、高リスクとされるマイノリティー住民の被験者をより多く確保するために試験をゆっくり進めたという面もある。
さらにファイザーの試験では、2回目の接種から1週間が経過した後、感染状況に関するデータの収集に入るが、モデルナはこの間隔を2週間に設定している。
元FDAのバイオテクノロジー局長で現在はパシフィック・リサーチ・インスティテュート上席研究員のヘンリー・ミラー博士は、少数の感染者数に基づく緊急使用許可では、何百万人もの健康な人への使用を想定したワクチンの安全性に対する十分な解答にならないと語り、幾つかの副作用は4カ月から半年後に発生してもおかしくないと強調した。
米バイオ医薬ベンチャー、ノババックスの研究開発責任者グレゴリー・グレン博士は、10月中のワクチン提供は可能性としてはあるとしながらも、国民はより長く待たされそうだとの見方を示した。同社もコロナワクチンを開発中だ。
グレン氏は「今は謙虚に振る舞うのが適切だと思う。FDAは(ワクチン開発)成功に厳格な基準を設けている。そのためにはかなり質の高いワクチンが申請されることになるだろう」と予想した。
(Michael Erman 記者、Julie Steenhuysen記者)
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