トランプ vs バイデン 無党派層獲得で両極端の戦略
米大統領選候補者を正式指名する民主・共和両党の党大会は、トランプ大統領の指名受諾演説で幕を閉じた。写真は27日、ホワイトハウス前で受諾演説をするトランプ大統領(2020年 ロイター/Carlos Barria)
米大統領選候補者を正式指名する民主・共和両党の党大会は、トランプ大統領の指名受諾演説で幕を閉じた。両陣営とも11月3日の本選に向け、勝敗の鍵を握るほんのわずかな無党派・穏健派層の票を狙う姿勢を鮮明にしたが、最終盤戦に差し掛かってのこの戦略は極めて対照的だ。
トランプ氏は党大会で、テレビのリアリティー番組の元司会者としての才能をいかんなく発揮し、自身の新型コロナウイルス危機対応に失望して離れた支持者の奪還に努めた。27日夜には、民主党候補バイデン前副大統領が大統領になれば米国は「無法」状態になると悲惨な絵を描いて見せた。
この発言から、共和党が今後2カ月間、どのような戦略を取ろうとしているかが見て取れる。米国民18万人の命を奪い、経済活動の手足を縛った新型コロナから争点を転じ、街頭の騒乱の責任は民主党に帰する戦略だ。
共和党側は、まるで感染症の危機が収束したかのようにコロナの話題をおおむね控え、危機以前の強い経済状態を有権者に思い起こさせようとした。一方、民主党大会では、バイデン氏は感染拡大に対してトランプ氏の取った行動の責任に焦点を当てた。
米デイトン大の選挙専門家、クリストファー・デビン氏は「両党の党大会は、わが国が今どこにいて、将来どうなる可能性があるのかについて、まったく異なる現実像を示した」と話す。
共和党大会は、トランプ氏を「法と秩序の擁護者」と位置付けた。ここで意識したのは、分断をあおるトランプ氏の扇情的な話術には同意できないものの、人種差別と警察の暴行への抗議活動が何カ月も続いて時に暴力的な光景に発展するのにいら立っている有権者だ。
ウィスコンシン・ミルウォーキー大のキャスリーン・ドラン政治科学教授は「これは自身の岩盤支持層をしっかり押さえ、投票に行かせようとする試みだ」とした上で、「同時に、トランプ氏が『郊外の女性』と呼ぶ、態度を決めていない女性有権者層の一部を引き込む狙いもある」と解説した。
ロイター/イプソスが19―25日に実施した世論調査によると、全米でバイデン氏の支持率はトランプ氏を7ポイント上回り、党大会前とほぼ同じだ。しかし郊外の有権者となると、両者の差が縮小。勝敗を決するこの層でこれまでリードを広げていたバイデン氏にとっては、気になる兆候だ。
鍵を握るとされる郊外女性層は、6月に比べるとトランプ氏に批判的ではなくなっている。この層でのバイデン氏のリードは9ポイントと、6月の同調査の15ポイントから縮まった。
大卒の白人層で見るとバイデン氏のリードは5ポイントで、やはり7月の7ポイント、6月の11ポイントから縮小している。
しかしトランプ氏が郊外の有権者にアピールするため、犯罪取り締まりについて情け容赦ない言葉で断固たるメッセージを出す一方、人種差別の是正を求めるデモ参加者にはほとんど共感を示さないのを見て、黒人有権者はますますバイデン氏を支持する可能性がある。