地方への女子のUターンをはばむものは何か?
<表2>は、同じ方法で算出した39道県のUターン率だ。埼玉、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫の7府県は、東京からのI・Jターン者が多いとみられるので、分析対象から外している。
最も高いのは滋賀で、男性は89.4%、女性は67.4%にもなる。にわかに信じがたいが、分子に東京からのI・Jターン者が多く含まれている可能性がある。この県も除外すべきだったかもしれない。最も低いのは、男性は秋田、女性は福井となっている。秋田の男性は25.4%、福井の女性は17.1%しか戻ってこない。
性差を見ると、最初にみた東北の6県と同じく、男性が女性より高い県が大半だ。不等号は15ポイント、赤の不等号は20ポイント以上の差を表し、三重県では男性が女性より27.7ポイントも高い。都会に出た若者のUターン率は、女子より男子で高い、男子のほうが戻ってくる。これは、ある程度の普遍則といえそうだ。
若者回復率のジェンダーギャップ
「都会の大学でジェンダーを学んだ女子は、田舎に帰るのを嫌がる」。ある教授から聞いた話だが、こういう現実はあるかもしれない。生まれ育った地で、親や周囲から繰り返し言い聞かされたことは間違いだったのではないか。こう悟った女子が、偏狭な文化が残る地元に帰るのをためらうのは分かる。
治部れんげ氏も、地元に戻ってくる若者の比率のジェンダー差を問題にしている(「人口8万人の市長がジェンダーギャップに目覚めた理由」ヤフーニュース個人、2020年7月18日)。若者回復率(20代の転入超過数/10代の転出超過数)の性差に危機感を持ち、ジェンダーギャップ解消に取り組み始めた兵庫県豊岡市の例が紹介されている。
最後の方で「若者回復率を性別で見るべし、男性は戻ってくるが女性は戻ってこないとしたら、その数字を正面から見据えよ」と書かれているが、筆者も同じことを言いたい。
出産可能な女性が戻ってこないのは、地域の存続に関わることだ。それをもたらしているのは、仕事がないとか、娯楽がないとかではなく、地域のジェンダー文化である可能性も否定できない。
<資料:総務省『国勢調査』>
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