最新記事

日本社会

地方への女子のUターンをはばむものは何か?

2020年8月20日(木)15時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

都会の大学でジェンダーを学んだ女子は田舎に帰るのを嫌がる? AntonioGuillem/iStock.

<東京から地方への若者のUターン比率を見ると、ほとんどの地域で男子よりも女子の方がUターン率が低い>

地方にとって、都会に出た若者がどれだけ戻ってくるかは重大な関心事だ。地方創生の政策立案に不可欠と思われるが、そのような統計はない。だが、『国勢調査』の公表数値からおおよその近似値は出せる。

青森県の男性を例に、計算方法を説明しよう。2010年の『国勢調査』によると、同年10月時点の20歳の東京都民(男性)のうち、5年前(15歳時)に青森県に住んでいた人は397人。青森から上京してきた人だ。

この世代は5年後の2015年に25歳になる。2015年10月時点の25歳の青森県民(男性)で、5年前の20歳時に東京に住んでいた人は126人。この数は、東京から戻ってきた人の近似数と読める(東京からのIターン、Jターンは非常に少ないと仮定)。

20歳と25歳の時点の居住地を手掛かりにすると、1990年生まれの青森県出身男性で上京した人は397人、うち出身県に戻ってきた人は126人と見積もられる。よってUターン率は、後者を前者で割って31.7%となる。およそ3人に1人だ。

同じやり方で、東北6県の上京者のUターン率を計算すると<表1>のようになる。ジェンダー差も見るため、男女で分ける。aは上京者、bはUターン者の仮定値だ。

data200820-chart01.jpg

2~3割という数値が並んでいる。東北から上京した人のUターン率の試算値だ。宮城の男性は半分が帰ってくるようだが、地方中枢県で雇用が比較的多いためかもしれない。

しかし女子を見ると、仙台市を擁する宮城と言えども、Uターン率は34.0%まで下がる。男性との差は16.0ポイント。東北の6県は全て、東京に出た若者のUターン率は「男性>女性」であるようだ。

<関連記事:日本は事実上の「学生ローン」を貸与型の「奨学金」と呼ぶのをやめるべき
<関連記事:貧困家庭の女子が人生を見限る「自己選抜」......「大学には行かれない」「子どもは欲しくない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次

ワールド

トランプ大統領、ベネズエラとの戦争否定せず NBC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中