「バイデン政権」、外交に関しては内向きなトランプ流継承か
元米国防総省当局者で中国専門家のマイケル・ピルズベリー氏は一時、トランプ政権の外部アドバイザーも務めたが、同氏によると、オバマ政権の最後の2年間に対中戦略は変わっていたという。
ピルズベリー氏によれば、バイデン氏の外交アドバイザーの面々、即ちエリー・ラトナー氏、カート・キャンベル氏、ブライアン・マッケオン氏、トニー・ブリンケン氏、ボブ・ワーク氏、アッシュ・カーター氏はいずれも、かつて中国について厳しい分析をしてきたし、中国の軍事的増強や情報窃取活動や貿易慣行について深い懸念を共有していた。
キャメロン元英首相の国家安全保障顧問を務めたピーター・リケッツ氏は、トランプ氏の中国政策を一部は評価するとしつつも、懸念も口にする。「トランプ政権は、中国政府のひどく強引な外交政策や国内で反体制派と見なした者たちへの弾圧などの振る舞いについて、膨れ上がる懸念を具体的な形にした。トランプ政権が進んで中国の前面に出て、そうした振る舞いを問題にする、つまり声高に非難しようとしたのは良いことだ」というのが同氏の評価。ただ、トランプ政権のそうした姿勢が今や行き過ぎてしまい、中国と全面対決の冷戦モードに突き進みかねないリスクがあると指摘する。
過去に英首相3人の外交顧問だったトム・フレッチャー氏によると、バイデン政権になっても対中政策が大きく変わるとはみていないが、摩擦は避けるスタイルになるだろうという。「バイデン氏の対中政策がトランプ氏の政策からかけ離れたものになるとは思わない。ただ、使われる文言は変わるだろうし、もっと分別や戦略に裏打ちされた文言になるだろう」。
対北朝鮮外交については、トランプ氏による前代未聞の、しかしなおも実を結んでいない同国への関与が、将来的には米朝関係の基礎になる可能性があるとの分析も聞かれる。
失われた米国の信頼
欧州連合(EU)の元駐米大使デービッド・オサリバン氏は、トランプ氏が外交に「壊滅的な打撃」をもたらしたとし、米国のイメージと指導的役割の再建には時間がかかるとみる。
しかし、オサリバン氏は、自国が海外にこれほどまでに関与する必要があるのかと懸念を深める米国人がいることや、一部同盟国が役目を果たしていないと感じる米国人がいることにも言及。こうした中で「トランプ氏が大統領選で負けても、欧州で涙を流す者はいないだろう」と手厳しい。トランプ政権は「とりわけ能力に欠け、不手際で、率直に言って同盟国と疎遠になり、それまでは敵対者と見なされていた国を安心させる傾向があった」と指摘する。
ただし、オサリバン氏は、バイデン政権が欧米協調の黄金時代を目指すとの幻想を持つ者もいないと警告する。「欧州と米国の食い違いはこれからも続く。ただ、われわれは相互に敬意を払うということから始めることはできる」という。
オサリバン氏らによると、バイデン氏がイラン核合意やTPPへの復帰を目指す可能性は高いが、その場合も、トランプ氏がしばしば口にしたような「より有利なディール」を確実にするような取り決めの改変は必ず求めてくるだろうという。
ブッシュ政権で国務省報道官、オバマ政権でバーレーン大使だったアダム・エレリ氏は、欧州勢などの脳裏にあるのは「トランプ的な外交が結局、再現されることになるのだろうか」という思いだと指摘した。
(David Brunnstrom記者、Humeyra Pamuk記者、Luke Baker記者)
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