ポスト安倍争いに菅官房長官も参加 岸田氏、石破氏と三つ巴の争いへ
かねてから名前が挙がる石破茂元幹事長(左)と岸田文雄政調会長(右)に加え、安倍政権の要である菅義偉官房長官(中央)が有力候補として急速に存在感を増している。REUTERS/Yuya Shino/Kim Kyung-Hoon/Katsumi Kasahara
安倍晋三首相の辞任表明を受けた自民党総裁選は行方が混沌としている。かねてから名前が挙がる岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長に加え、安倍政権の要である菅義偉官房長官が有力候補として急速に存在感を増している。誰を党の顔に据えて次の総選挙を戦うのか、衆議院解散の時期をにらみながら党内の駆け引きが続きそうだ。
総裁選の方式が結果に影響
結果が見通しにくい自民党総裁選は、安倍首相が石破氏に逆転勝利した2012年9月以来。18年の総裁選は、現職の安倍首相の勝利が確実視されていた。
28日に辞任を表明した安倍首相は、以前から後継として岸田氏に期待してきた。第2次内閣の7年8カ月、岸田氏は外相、自民党政調会長とずっと要職を任されてきた。にもかかわらず、世論調査で岸田氏の支持率は安定して低い状態が続いている。
安倍首相の盟友で、岸田氏を推す自民党の甘利明税調会長は25日、ロイターとのインタビューで、「岸田氏としては存在感をしっかり示すことができるかどうか次第で、この1―2カ月が正念場だ」と語っている。本人も知名度の低さを認識しているようで、このほど著書を出版、テレビへの露出も増やしている。
岸田氏は28日に新潟県で講演。地元紙・新潟日報によると、「総裁選については私もぜひ挑戦したい」と語った。
逆に世論の支持が高いのが、過去2回の総裁選で安倍首相に敗れた石破元幹事長だ。党内でも草の根の人気を集め、2012年の総裁選では地方議員票や党員票で安倍氏を上回った。しかし、国会議員だけが投票できる2回目の決選投票で逆転を許した。
石破氏は28日夜のテレビ番組で、再び総裁選へ立候補することに意欲を見せたが、ネックになりそうなのが今回の総裁選出方法だ。自民党の規定では、緊急を要する場合、国会議員票をより重視する簡素な両院議員総会で決めることが可能。複数の国内メディアは、ポスト安倍を決める総裁選はこの簡素化方式で、9月15日を軸に行われると報じている。
石破氏は28日に出演した別のテレビ番組で、「わが国の命運を決する選挙になるのだから、あまり簡便な方法を取るべきではない」とけん制した。
こうした中で有力候補として急浮上してきたのが、屋台骨として安倍政権を支えてきた菅官房長官だ。新型コロナウイルス渦中に、大きな政策変更は好ましくないとして名前が挙がる。
2019年4月に新元号「令和」を発表して若年層にも顔と名前が浸透した菅氏は、同年5月、官房長官としては異例の外遊に出て訪米した。ペンス副大統領に迎えられ、ホワイトハウスで厚遇を受けた。
安倍首相は今年7月発売の月刊誌「Hanada」のインタビューで、菅氏について「有力な候補者の一人であることは間違いない」と語った。
菅氏自身は、首相という職務に関心を示していない。26日にロイターのインタビューに応じた菅氏は、首相の座を目指すかどうか問われ、「考えたこともない」と一蹴している。「菅氏は調整型の人材。総理向きではないことは本人が最も熟知している」(自民党のベテラン議員)との指摘もある。
しかし菅氏はロイターとのインタビュー以外にも、ここ最近たびたびメディアに出演し、アベノミクスや新型コロナ対策について成果を強調している。自民党内には「公明党や維新(の会)とのパイプが太く、次期衆院選でこれらの党との協力を強化する上で最適」などの声が根強い。