最新記事

2020米大統領選

副大統領候補ハリスが歩み始めた大統領への道 バイデンが期待する次世代政治家の「力」

Harris to Be a Powerful Veep

2020年8月18日(火)19時30分
マイケル・ハーシュ

おそろいのマスク姿で2人での初演説に臨んだバイデンとハリス(右) DREW ANGERER/GETTY IMAGES

<民主党のバイデンから副大統領候補に指名されたカマラ・ハリスとは何者? 2人はオバマ&バイデンのような最強コンビになれるのか>

選挙の荒波を乗り越えて、民主党の正副大統領候補コンビが運よくホワイトハウスにたどり着いたとしよう。そのときカマラ・ハリス上院議員はどんな副大統領になるか。「黒人とインド人の血を引く女性として初」という点を除けば何の特徴もない退屈な副大統領になるだろうか。筆者は、そうは思わない。

なにしろ主役のジョー・バイデン自身、バラク・オバマの下で8年間、副大統領としては異例な影響力を行使してきた男。ハリスにも同等な役割を期待するとみていい。

もちろん互いの立場は異なる。大統領に就任した2009年1月当時のオバマは上院議員を1期務めただけで、外交経験はほとんどゼロ。当然のことながら外交面ではバイデンに頼る場面が多かった。2010年に取材したとき、バイデンは筆者に言ったものだ。ここまで多くの政策について自分に采配を「任せてくれる」とは思わなかったと。

就任間もない時期のある会合で、オバマは不意に押し黙り、こう言ったという。「イラクのことはジョー(・バイデン)が仕切る。ジョーは誰よりもイラクをよく知っている」。そして金融危機後のアメリカ経済を再建するための特別法についても、議会対策を「私に委ねた」とバイデンは語っている。

もちろんオバマがバイデンの言いなりだったわけではない。アフガニスタン駐留米軍の大幅削減やウサマ・ビンラディン殺害(2011年)ではバイデンの反対を押し切った。それでも再選を目指す2012年の選挙戦でバイデンが言ったとおり、「執務室に最後まで残って大統領と2人きりになる」のはいつもバイデンだった。

大統領と会う時間の長さで権力の重さが測られる首都ワシントンでは、これは重要な要素だ。当時の政権中枢にいた人々によれば、バイデンは国家安全保障チームとの会合が終わってからも大統領執務室に残り、次の経済チームが入室するまで2人きりで議論していたという。

ただしバイデンとハリスがそこまでの信頼関係を築くには多少の時間が必要だろう。民主党の予備選に名乗りを上げていたハリスは当初、人種問題などでバイデンを厳しく批判していた。

しかもハリスが経験の浅い1期目の上院議員であるのに対し、バイデンは半世紀近いキャリアを誇る議会政治の超ベテラン。それでも彼はハリスに、オバマ政権時代の自分が果たしたような役割を与えるだろうか。疑問は残るが、あるバイデン側近は筆者にメールで「疑問の余地なく、イエス」だと伝えてきた。

2024年の大統領?

かつて上院外交委員会を率いていたバイデンは、こと外交に関する限り百戦錬磨の猛者だ。自分が大統領になれば、現職ドナルド・トランプがアメリカの同盟諸国や国際機関との関係に与えてきた甚大なダメージを修復するために尽力すると、一貫して主張している。トランプが離脱に踏み切ったイラン核合意や地球温暖化対策の国際的な枠組である「パリ協定」についても、路線を転換して復帰を模索することだろう。

【関連記事】パックン予測:カマラ・ハリスは2024年のアメリカ大統領になる!
【関連記事】バイデン陣営はこれで「ターボ全開」? 副大統領候補ハリス指名の意味

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 9
    ハマス奇襲以来でイスラエルの最も悲痛な日── 拉致さ…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中