副大統領候補ハリスが歩み始めた大統領への道 バイデンが期待する次世代政治家の「力」
Harris to Be a Powerful Veep
一方で、カリフォルニア州の司法長官だったハリスに期待されるのは国内問題、とりわけ刑事司法や警察制度の改革、アフリカ系アメリカ人コミュニティーや女性の声に耳を傾け、手を差し伸べる役割だ。ハリスの起用に当たって彼女の人種と性別が重要な要素の1つであったことは間違いない。
「そういう役割分担の可能性は高いと思う」と言うのは、かつてバイデンの側近だったマイケル・ホルツェル。「言わせてもらえば、ハリスは(ベテラン上院議員の)エリザベス・ウォーレンと並んで、万が一の場合に大統領の職務を遂行するのに最も適した人材だ。ハリスが外交面で1つか2つの『担当』をもらってもおかしくない」
一方、クリントン政権の副大統領だった時期のアル・ゴアを支えたブレーンの1人で今はブルッキングス研究所にいるエレイン・カマークは、ハリスが「差別問題や警察改革に加えて議会対策でも相当な役割」を果たすだろうとみる。そもそもバイデンは「自分と同じタイプ」の人間を選んだのであり、現にハリスは「穏健派で、外交にも精通している」からだ。
もう1つの重要な要素がバイデンの年齢だ。77歳の彼はこれまで何度も、自分は次世代への「橋渡し役」にすぎないと述べ、再選は望まないとさえ示唆してきた。つまり55歳のハリスの副大統領候補指名は、そのまま彼女を(早ければ2024年の選挙で)民主党大統領候補の一番手に押し上げる意味を持つ。
言うまでもないが、過去の副大統領は総じて影の薄い存在だった。上院の採決が賛否同数となった場合に最後の一票を投じる以外はほとんど憲政上の職責を持たない退屈な仕事。たいてい蚊帳の外で、閣議にも出ない。大統領が死んだ場合に代役を務めるのが最重要任務だ。
初代副大統領のジョン・アダムズは後に、副大統領職は「人類が考え出した最も取るに足らない職務」だと苦々しげに記している。フランクリン・ルーズベルトの最初の副大統領だったジョン・ガーナーも、副大統領には「バケツ1杯の小便」ほどの価値もないと語っていた。要するに副大統領は、選挙でバランスよく票を集めるための道具であり、当選後は忘れられる存在であればよかった。
だが最近は様子が違う。クリントン政権のゴアもジョージ・W・ブッシュ政権のディック・チェイニーも、そしてバイデン自身も相当な実権を握っていた。
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