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先進医療消化器で勝手にアルコールが生成され酩酊する奇病に効いた「糞便移植」とは?
Man Got Drunk on Carbs That His Stomach Turned Into Alcohol
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パスタを食べただけで酩酊状態に?悪さをする腸内細菌は丸ごと変えてしまう手もある jakubzak/iStock
<パンやパスタを食べただけでひどく酒に酔ったような感覚を覚えると訴える男性に糞便移植を行ったところ症状がなくなったという>
パスタやパンなど炭水化物を多く含むものを食べると、酒に酔ったようになる――こんな珍しい疾患を抱える男性に糞便移植を行ったところ、治療効果が認められたという。
米国内科学会の医学雑誌「内科紀要」に発表された論文によれば、ベルギー出身の47歳の男性(氏名非公表)は、酒を飲んだわけでもないのにひどく酔ったようになると医師に訴えた。症状は病院を訪れる2カ月前、抗生物質を服用するようになってから始まったという。
医師たちは、男性に幾つもの検査を実施。消去法から、男性がいわゆる「自動醸造症候群(または腸発酵症候群)」ではないかと診断した。炭水化物を摂取すると、消化器系にいる菌やバクテリアの作用でアルコールが生成される症状だ。治療法としては、高タンパク・低炭水化物の食事で腸内の糖がアルコールに変換されるのを阻止する方法などがある。
しかし男性に低炭水化物の食事法と抗真菌薬を処方した後も、特定の食べ物を摂取した後に酒に酔った感覚を覚える症状は続いた。男性は医師たちに、妻からは酒臭いと言われ、警察の検問にも引っかかって運転免許証を失った。
腸内細菌のバランスがカギ?
そこで医師団は、糞便移植を行うことにした。腸内細菌のバランスが狂った人の胃腸管に、健康な人の糞便を移植する治療法だ。男性の娘(22)がドナーになることに同意した。
この処置を行った後、酒に酔ったような症状は収まり、移植から34カ月後も再発はしなかった。
論文の共著者であるベルギーのゲント大学のダニー・デルーズ教授はメールで本誌の取材に応じ、男性には、パンやパスタ、じゃがいもなどの炭水化物を摂取した後に酒に酔ったような感覚を覚える症状があったと述べた。
「自動醸造症候群に関して、糞便移植が功を奏したことが明らかにされたのは(我々の知る限りでは)これが初めてだ」
デルーズは、一般に自動醸造症候群は菌の異常増殖が原因だと考えられているが、バクテリアがエタノールを生成する場合もあると指摘。今回は移植によって男性の腸内から、エタノールを生成する微生物種、おそらくはバクテリアが取り除かれた可能性があると述べた。
「今後、自動醸造症候群の患者に対しては糞便移植も試してみるべきだ」とデルーズは語った。臨床試験の機会を設けるのが理想だが、この疾患がきわめて珍しいものであることを考えると、人間での臨床試験を行うのは無理だろう」
<参考記事>他人の便で病気を治す糞便移植、ただし移植する便には気を付けて──アメリカで1人死亡
<参考記事>「うんちカプセル」のすご過ぎる効果
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